はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

サイレントヒル

2006-08-04 23:22:40 | 映画
ローズ・ダ・シルバは娘、シャロンの不安定な言動に悩まされていた。それは夢遊病とも思えるような奇妙なもの。わずか9歳の少女がしきりに「サイレントヒル」という町の名を繰り返し、夜の山道をさ迷うのだ。
見かねたローズは夫クリストファーの制止を振り切りサイレントヒルを目指すのだが、その道中で事故に遭い、意識を失ってしまう。目覚めたときには後部座席に乗っていたはずのシャロンの姿はすでになく、かわりに禍々しい一枚の絵が置かれていた。
あたりは一面の霧。どこまでも続く深い霧……。

「サイレントヒル」は、ゲームを原作としたシチュエーションホラーだ。それだけに導入は凝っている。
娘を失い、たったひとりで霧の中にたたずむローズ。「投げ出された」感は、サイレントヒルシリーズ特有のものだ。これからローズが自力で切り抜けねばならない様々の脅威を思い、自分自身に重ね合わせて想像すると、本当にぞくぞくする。この「やってやるぞ」という思考は、いまだに誰かと共有できたことがない。
映画館にはAと一緒にいった。アンデルセン展のあとに見るホラー映画というのは、普段と違い味わい深いものであった。
Aは、自身初の「映画館で見るホラー映画」というものの、思ったほど怖がってはいないようだった。ぽりぽりとポップコーンを齧る余裕すらある。本人によると、上映前に俺がいった、「全部作り物だから。怖いというよりよくできてるなあくらいに思えばいいんだよ」という言葉が効いたらしい。
まあ実際のところ、それほど怖い映画ではなかった。迫り来る異形のクリーチャーと対比された魔女狩り教団。そして霧の世界と現実の世界の境界線の存在が、怖さを薄れさせた。
ホラー映画のくせに「起こっている事の意味を考えさせる」ほうにベクトルが向いていることも原因のひとつなのかもしれない。
いずれにしろ、始まりから終わりまで、俺はずっと考えていた。そして悲しく思った。霧の世界は、死後の世界なのだ。多くの人間が死ぬ際に感じたストレスが、強い感情の爆発が、この霧の世界を生み出した。「死んでも逃げられない」というキャッチに嘘偽りはなかった。冒頭で、すでにローズは死んでいた。
そう思って見れば、ラストの一連のシーンの乾いたイメージはより一層強くなる。これは、とても無慈悲で、残酷で、切ない擦れ違いの物語なのだ。





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