田神六兎の明るい日記帳

田神六兎の過去、現在、そして起こるであろう出来事を楽しく明るくお伝えします。

セルフ・ネグレクト=生活意欲減退

2013年07月21日 | 日記
 ネットで、『元教師女性「ゴミ屋敷」で逮捕』の記事があった。長年同居していた母親が施設に入ったことで生活意欲を失い、収集癖に走ったそうだ。その女性が元教師であったことで、特に取り上げられたのであろう。ゴミ収集癖から抜け出せないのは、母親がいなくなった喪失感の埋め合わせ行為と書かれていた。
 過去に良く似た事例を思い出した。私の団地は10~15軒で一つの班を構成し、班はおおよそ20ある。班の一つにゴミ部屋があった。迷惑をこうむっているにもかかわらず、班の人達は団地内の噂ににならぬよう、身体に不自由な部分がある老いた住人に、何かと注意したり手伝っていたそうだ。
 住人は既に夫を失っていた。夫は地方の一機関のトップを勤め上げた実力者であったそうだが、激務がたたったのか、夫は急死なさったと聞いた。未亡人になってしばらくして、ゴミ部屋化したそうだ。
 ある年、私は排水管洗浄のために、全室で立会いを求められた。その部屋にも、当然入らねばならなかった。足の踏み場も無く、新聞、雑誌、無数のワインボトルが床を埋め尽くしていた。住人は「足が汚れるから靴を履いてくれ。」と玄関から、私の靴を両手に持ち、脚を引きずりながら靴を渡そうとした。言われたとおり靴を履き、移動するにも新聞の束を踏まねばならず、踏めば新聞の四方から無数のゴキブリが飛び出した。
 それから半年後、住人は浴槽で事故死した。知らせを聞いて息子が駆けつけ、室内の状況にたいそう驚き、急いで清掃業者に清掃を依頼した。作業は深夜まで続いた。翌日通夜が営まれた。カーペットがはがされた室内の床は土足となり、業者が用意した椅子が並べられた。もうゴミ部屋の痕跡はなかった。私は老いた住人にこのような子がいたことを知らなかった。班の人も同様であっただろう。住人がゴミ収集癖に走った、誰にも解らぬ原因の一つを見たように思う。