「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

国際防災協力の1日:中米6ヵ国+キューバからのお客さまを迎えて

2015-01-14 20:47:11 | 国際防災協力
神戸市の通称HAT神戸にあるJICA(国際協力機構)の研修施設「JICA関西」にて
今年も中米6ヵ国からの研修員を招いての防災研修が始まった。

毎年この時期、何らかの形でお手伝いさせてもらっている。
もう10年にもなるだろうか。

日本には、10人いるかいないかくらいの人数だが、
中米のコミュニティ防災活動に関心を持ち続けている者がいる。

毎年この時期、新しい研修員が来るのを楽しみにしていて、そして、
彼らに教え、彼らと共に進めている中米でのコミュニティ防災活動が、
ゆっくりとではあろうが少しずつでも進んでいることを我が事として喜んでいる者たち。
「旅の坊主」もその一人。

13名の研修員の中に、中米で過ごした2010年9月から翌年9月までの間に、
「プロジェクトBOSAI」の活動の中で一緒に活動した者が3名いた。

かつて共に汗を流し、共に食事をし、酒を酌み交わした仲間たち。
日本でまた彼らと会えること、彼らと旧交を暖め合えること、
それが、この種の仕事に携わっている者への「ごほうび」だろうし、
またそういう人間関係があってこそ、プロジェクトは前に進んでいく、と
「旅の坊主」は信じている。

また何より、そうでなければ面白くない。

今日は各国のコミュニティ防災の状況を報告し合うというカントリーレポートの日。
日本側参加者も、通訳兼研修コーディネーターのKさんを含め、
アジア防災センターのAさん、プロジェクトBOSAIの専門家職を引き継いでくれた
現在はJICA地球環境部でお勤めのIさん、みな、勝手知ったるメンバー。

今年からキューバからも研修生が来てくれた。
コミュニティ防災の世界では世界の最先端を走っているとも言われるキューバ。
最近、アメリカと50年ぶりに復交するとかしないとか、話題となったが、
貧しくても人を死なさない防災を実践している国として知られている。
この中米防災研修の枠組みにこれからも入ってくれるならば、
それは、お互いにとって、大変ハッピーなことだろう。

10年前は、防災と聞けば基本的には災害対応オンリーという感じの各国だったが、
今は、防災教育の意義が、予防の重要性が、まちづくりが、語られるようになった。
現地で1年活動した者としても、これらの発展は本当に嬉しい。
彼らの滞在中、もう一度語る機会がある。それも楽しみである。

プレクルソ打ち上げ

2010-11-03 23:10:55 | 国際防災協力
プレクルソ3日目(最終日)。
昨日に引き続き、PCMのセミナーが続く。

最初に同僚Kさんが、問題を分析することの重要性について、
簡単なスピーチをする。
「風が吹けば桶屋が儲かる」
とまでは言わないが、
問題の本質は、パッと見でわかるものとは限らない。
否、じっくりとした分析が必要な事例がほとんどだろう。

分析には時間がかかる。
だが、そのことをしっかりやらないと、
本当に意味ある対策は打てない。

また、この種の問題分析を行うということが、
JICAの国際協力の共通言語だ、とも。

上位の目標があり、その中で具体的な行動がある。
具体的な行動、例えばリスクマップ作りは、
もっと上位の目標があり、そのための手段として行われているのであって、
リスクマップ作りが自己目的化するようなことを、
私たちは考えている訳ではないのだ。

Kさんのスピーチを一般化するならば、
こんな感じとなろうか。

今日も第一列ではなく、事務局席に座る。
メールでの調整など行いつつ、ワークショップ全体の雰囲気を見る。

休み時間だったか、
Sリーダーから、プロジェクトの理想形についての話が出た。

プロジェクトは、

「プロジェクト・マネージャー(現地のカウンターパート機関の幹部)」
「ナショナル・コーディネーター(プロジェクトが雇用し、業務の調整に当たる者」
「JICA事務所(当地の事務所で、金銭面から活動をチェック)
「専門家(「旅の坊主」のような者)」

のカルテットで、かつ、
専門家が何を言わなくても動いていくようなものが理想なのだ、と。
2ヶ月に1回程度の定期的な情報共有の会を持てればそれで済む、
そのような状態まで持っていければ、と。

なるほど!と思うところは大だが、
さて、そのような体制(態勢)作りがどれほど大変か……。
コスタリカ一国を相手にするのでもなかなか頭が痛いのに……。

PCMのセミナーについては、いろいろと思うところはある。

分析のための枠組み(フレームワーク作り)と、
その「網の目」があればこそすくい取ることが出来た(明文化出来た)問題

一般化可能なものと個別事情の区分
分析手法の習得と、実際のケース分析の混同

ケース・スタディー用の資料をしっかりと読み込む、というよりも、
ケース・スタディー用の資料には書かれていないことまで意識をめぐらすこと

問題の構造化(あるいは可視化・図式化)の議論
(単純な因果関係や樹形図だけでは整理出来まい……)
(少なくとも、派遣前研修ではそういう話であったが???)

グループワークの人数、
グループワークとラップアップに配当する時間の割合、

等々。

それでも、最後には、何とか、
分析結果を標準的な枠組みの中に示せたようで、
研修員もそれなりの達成感を持てたようであった。

修了式、終了証の授与等、公式セレモニーも無事終了。
一旦自宅に戻り、改めて19時から会場で打ち上げパーティー。

中米だから、ではなかろう。
「同じ釜の飯を食った間柄」というのは、
日本ではもう死語かもしれないが、
この地には、それは、厳然として存在している。

同じ時間を共にし、同じ課題に取り組み、同じように悩み……。
広域プロジェクトゆえの6ヶ国+1国際機関の関係者間に、
同期としての連帯感をはぐくめるような演出を行えるかどうか。
プロジェクトに携わるというのは、そういうことでもある。

アルコール分は、我々専門家のポケットマネーから出ている。
「人づくり、国づくり、心のふれあい」とは、
JICAが昔使っていた標語なのだそうな。
心のふれあいに役立つならば、多少の自腹など安いもの。
(ただ、こういう額を経費として認めないということは、
自腹を切って当たり前と思う者が少なくなっていけば、
絶えていってしまうものかもしれない……)、

USBにダンス・ミュージックを入れて持ち歩いているのはさすが中米人。
(ただし、ダンスの技はドミニカ共和国の人間には負けるらしい……)
(まだ水曜日だというのに)まわりの迷惑省みず!
大音量でBGMを流しつつの、飲み、食べ、踊り。

結局のところ、頭での理解ではなく、
この種の人間の素の触れ合いが、
問題を解決していくのだろうなぁ、と、単純に思う。
もちろん、我々専門家の場合は、そこに専門性が求められる訳で、
飲みまくり踊りまくりの翌朝、
バシッとした講義やワークショップができてナンボ、
という話ではあるのだが。

流れ解散となり、22時過ぎ、自宅に戻る。

                           (11月6日アップ)

PCMのワークショップに思う

2010-11-02 23:55:49 | 国際防災協力
普段に比べると、少しゆっくり目の朝。
8時過ぎに自宅を出て、クラウンプラザホテルへ。

中米防災本邦研修のプレクルソ(事前研修)2日目。
JICAの「共通言語」とでも言うべき
PCM(Project Cycle Management)について、
地元のコンサルタントを招いてのワークショップ。

思うところあって、
研修員と同じ第一列ではなく、
事務局側の席に座って(内職もしつつだが)全体を見ていた。

8月に市ヶ谷に通った派遣前研修でも感じたことだが、
ファシリテーター経験も3ケタ後半に入ったがゆえに、
他の方のファシリテーションを見るのは、
本当に良い勉強の機会である。

この日のファシリテーターはCさん。
PCM研修はさておき、
BOSAI分野のワークショップ経験は豊富ではあるまい。
その中でセミナーには、頭の下がる思い。

まぁ……。
突っ込み処がない訳ではない。
何せ、JICA流のPCMはさておき、
BOSAIワークショップを語らせたなら、
ちょいとばかりうるさいので。

曰く、

「20人強の研修員に参加型セミナーをやるなら、
全体セッションが長すぎる。」

「総論は議論がバラバラになりやすい。いわゆる空中戦。
地に足のついた議論をさせたいならば、各論・具体論での勝負を」

「方法論を取得させたいならば、
事例研究の部分と方法論伝達の部分の明確な区分を」

等々。

突っ込みたいところは、ままあるが、
すくなくとも、この場はCさんのワークショップ。
また、
「60点だったら満点と褒めなさい」とは、
O先生ご夫妻の教えであった。

まずは、慣れない分野であろうBOSAIについてがんばった
Cさんにエールを送ろう。
何より、参加した研修員が満足していた模様。
それであれば、ちゃぶ台返しは無用というもの。

18時過ぎに自宅に戻り、
結局のところ、あり合わせで夕食。

その後はいつものように、
メールやら原稿書きやらで夜が更ける。

幹事を必要としない飲み会?に思う

2010-11-01 23:09:25 | 国際防災協力
早いもので、今日から11月。

当地エルサルバドルでは、
今日から中米防災対策研修のプレクルソ(派遣前研修)が
2泊3日の予定で始まる。

兵庫県とJICA兵庫の協働で2000年にスタートしたこの研修も、
もう10年を数えた。

研修を手伝うようになったのはいつからだったか、
はっきりとは覚えていないが、
日本の研修で出会った仲間と当地で再会する、
当地で短期派遣期間中に出会った仲間と日本で再会する、
いずれもよいものだった。

何年前の研修だったか、
みんなで持ち寄りのパーティーを開き、
「森のくまさん」のダンスで盛り上がったことを思い出す。

さて。

初日のプログラムは、
1年先輩となる昨年度の研修員からの
「日本から帰ってからの1年で何をやったか」の報告や、
今年度の研修員による
「我が国の防災体制はどうなっているか」の報告、
といったもの。

それはそれで納得できるのだが、
どこか違和感が否めない。

スペイン語がわからない、
ということが大きな原因とは思うが……。

日本に行って何を学んでもらいたいのか、
日本とのギャップをしっかりと見据えた上で、
なおかつ何を持ちかえってもらいたいのか。
その辺りについてのエールなり、
オリエンテーションなりが見えなかったから、
ということではないか、と、
「旅の坊主」なりに分析する。

黙っているのもしゃくだったので、
かつ、うまい具合に10分弱の時間があったので、
先日のコスタリカ・コバノ訪問の時の写真を数枚用意し、
「研修員OB・OG+地域の人+JOCVなど日本の支援」で、
どういう具体的なBOSAI活動が展開されたのかについて、
即席のプレゼンをさせてもらう。

ただ、あまり反応はなかった……。

「みんな、関心がない」
「日本旅行で、向こうへ行って何をしようかばかり考えている」
とは、思いたくはないのだが、
実のところ、よくわからなかった。

会場は、当地到着早々にお世話になったクラウンプラザ。
会場、食事、セレモニー、修了書等々に凝るのが
当地の流儀らしい。
当然のように、昼食と2回のコーヒーブレイク。
最終日にはちょっとしたバンケットも予定されている。

まぁ、かりかりしたところで始まるものでもあるまい。
「郷に入れば郷に従え」を忘れ、
自分一人が粋がったところで、
結局浮いてしまい、
モノを出せず仕舞となるのは愚かなこと。
短期的な違和感の元を追求するのではなく、
長い目での結果を出すことにこそ、
知恵を使うべきであろう……。

一つ勉強になったことがあった。

日当などは出ているものの、
食費を浮かしたいのは研修員共通の願い。
一人二人なら日本人専門家がごちそうするよ、という話もあろうが、
さすがに人数が……。
ともかく、「安くて済むププサを食べに行こう」
という話になった、らしい。

ここから先が面白い。

言い出しっぺは、言うだけ言って、あとは知らんぷり。
集合時間・場所には現れず。
誰一人、どこに行くか、どうやって行くか、段取りをしない。
結局、日本人専門家3人が、行き場所を決め、
タクシーなどの手配をする。

さらにさらに。
17人という、テーブルの1つ2つでは埒の明かない人数。
日本ならば、幹事役が店側と交渉して、
まとまって座れる場所を確保する、と思っていたのだが……。
店についたはいいが、場所の確保には誰一人動かず、
注文の行列に並ぶのみ。

なるほどなぁ、と、妙に感心してしまった。
宴会なのに幹事役を必要としない文化があるというのは、
なかなか衝撃的な「発見」であった。

大人数用に確保されてある部屋を空けてもらい、
皆がわかるよう案内をしたのが「旅の坊主」自身。
海外に出ればJICA専門家のステイタスはそれなりに高いのだが、
どうも、単なる「変わった人」扱いだったようだ。

「せっかくの機会だから、みんな一緒に」という発想は、
当地には存在しないようだ。
さらに言えば、
一人二人いなくなったところで、誰も気にしない、と。
ふーん、そういうものなのか……。

宴会幹事が務まるかどうかは、
日本では、人物を評価する一つの物差しであるが、
当地では、良い意味でも悪い意味でも個人主義、
ということらしい。

初めて、まともに感じた「文化の違い」であった。
その意味で、大いに勉強になった飲み会?であった。

教育論議

2010-10-31 23:40:51 | 国際防災協力
日曜ということもあって、のんびりした朝となる。
いつものように、シャワー、コーヒー、果物の軽食、等々。

昼過ぎ、JICA事務所のMさんが迎えに来てくれる。
年末に任期を終えて帰国するのだが、
車をどうするつもりなのか、その辺りを聞きたくて、
昼食にお誘いした次第。
(もっとも、先方の送迎付きではあるが。)

ヘネラル・エスカロン大通りに面した
ショッピングモールのピザ屋さんへ。
なかなか美味しく、食べ応えのあるものであった。

小学校の教員、JOCV隊員、JICA事務所スタッフ、と、
多くの経験を持ちつつ今に験を持つMさん。
言っていることに、なるほど、説得力がある。
経験と考えの深さのなす技なのだろう。

お互い、教育に携わっている者として、
次の世代への接し方について、議論となる。

夢を語ること。
褒めるべきものがあったら褒めること。
褒めるに値しないなら褒めないこと。
何であれ、挑戦しようとする子供は応援すること。
大人であることを見せること。
大人と子供の間にある決定的な差をどう考えるかということ。
等々。

帰国されたH専門家が、帰国報告会の時、
「住民をその気にさせる秘訣は?」との問いに、
「専門家が本気になること」と答えていた。

本気になって向き合うかどうか。
それは、どこでも一緒なのだろうなぁ……。

モールの中の本屋さんで、
極めて遅まきながらも、サンサルバドルの地図を買い、
同じくモールの中のスーパーで買い物。
そのままMさんに自宅まで送ってもらう。
(コーヒーくらいお誘いすればよかったと反省……)

再び、ノートとパソコン、ヘッドセットの活動に戻る。
なかなか20通のメールは書けないが……。