<神木のイヌマキ こうのぎのいぬまき>
熊野の山海を巡っている最中、
たくさんのご神木や巨樹に出会いましたが、
その姿をじっくりと眺めてみますと、
どれもが個性的な風貌を持ち、
ひとつとして同じ形の木はありません。
まるで暗闇で息をひそめるマンモス象のごとく、
動物的な胎動を宿していた引作の大楠に比べ、
こちらの神木のイヌマキのほうは、
まさに「ご神木」という表現がぴったりの
すっきりとしたクセのない印象の立ち姿です。
天に向かってまっすぐに伸びるその容姿は、
集落の土地柄をあらわしているのでしょうか。
近年、このご神木の前に地元の人々が集まり、
ご神事やお祭りを執り行っていると聞きます。
有志の方々が太鼓を叩いたり音楽を奏でたりと、
手作り感あふれる小さなイベントのようですが、
この神木イヌマキの周りには、
そんな素朴でのんびりとした光景が
よく似合うような気がしました。