<国立民族学博物館>
アイヌと縄文人とのつながりについては、
専門家の間でも意見が分かれるようですが、
アイヌに残る様々な思想や習俗を調べておりますと、
個人的にはやはり両者の間に深い結びつきを
感じるのも確かです。そのひとつが、
アイヌの人々の間に伝承される「文様」でして、
その幾何学的な図形の繰り返しを伴うデザインは、
どう見ても縄文土器のそれを想像せずにはいられません。
ちなみに、アイヌの人たちは、「絵」や
「生き物の造形物」などを極力避けていた節があり、
アイヌの血を引く老人が、動物の着ぐるみを着た人を見て、
「何と恐ろしいことを……」と卒倒したという話も聞きます。
恐らく、縄文人と同じようにアイヌの人々にとっても、
「神」が宿る動物や自然界の生物を安易に模写することは、
タブー中のタブーだったのでしょう。
縄文人が、大胆にデフォルメした図柄を土器に用いたり、
わざと人間離れしたフォルムの土偶を造ったりしたように、
アイヌの人たちも命あるものを「生き写しにする」ことに、
ある種の畏れを感じていたと考えられるのです。