DREAM/ING 111

私の中の「ま、いいか」なブラック&ホワイトホール

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年/感想

2013-05-09 | 
※あくまで一個人感想です。
今後も追記・削除を含む変更あります。

※一部読書メモと重複します。

内容に関わりますので未読の方はご注意ください。


読み出して数日、かつて「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」を
半日で読み終わった自分はもういないんだな、と気づくところからスタート。

なかなか集中できなくなっている自分が面倒。
これって年齢なのかな?とも思うし、強烈なドーパミン体験をイタプロでしてしまっているその反動もあるだろうし・・・でも、なによりも「対村上春樹バリア」のようなものが自分の中に確実にできてしまっている。

村上作品のいくつか(「ねじまき鳥クロニクル」「神の子どもたちはみな踊る」あたり)には、ひどい傷をおわされた(その傷自体が、私にとっての春樹価値を高めてしまうというアンビバレントな状況をちょっと面白く感じつつ)その強烈なマイナス記憶のせいで、どうも脳にダイレクトに情報がいかないように大量のチャフがばらまかれてる感じ。

そして、指定音源(?)がかえって物語世界を固定してしまって色がつく。
それが目的かもしれませんが、どうも好きな色ではなくて。

なので(ファン失格でしょうが・・・ってファンなのかなぁ??)
自分の好きな音源に切り替えたらやっと物語に入ることができました。

初期感想:
物語よりも、重箱にきちんと納められた言葉の質感と配置を楽しんでいる感じ。
きちんと発音された言葉のように、意味を届かせる作業。
ゆっくりとたんねんに選ばれた言葉を辿ります。

・・・だったのですが、いつもの春樹氏のヰタ・セクスアリス欲求(?)が出てきて、急ブレーキ。
うーーーーん、彼の作品って、ある意味、この欲求のバリエーションではないかと思える。

独特のにおい(プレ青年臭とでもいえばいいのでしょうか?少年期からの永遠の過渡期のようなとどまり感・・・カフカ君でも相当きつかったんですが;;)のある性欲バナシは、あまり得意ではないのだが、これがないと村上春樹物語にならない、というのもあるのかも。なので、BGMの力をかりて読み下す(推奨音源ではありません)。

物語自体はシンプル。で、個人の存在と他者との関わりの
せめぎあいのような関係が深刻にでも淡々と描かれる。

猟奇的事件とそこに至る狂気を1つ内包しているけれど、
それにはさほど色はついていなくて、かえってモノクロ映像のよう。
それによって個々にゆがんでしまった(らしい)エゴの色合いが主題かと。

あとは、自殺抑止効果?
しょせん、自分ではない他者のために、自分の存在を完全否定するな、
というメッセージでしょうか?いや、その周辺の空気というべきか。

夢が表舞台に近いので、わりと好きだった「アフターダーク」に通じる世界観で、個人的には嫌いではない、というか可もなく不可もない作品に落ち着きました(・・・これって新刊評としてはどうなのか?はさておき)。あ、「1Q84」も夢を紡ぐのでしたか。。。あれはちょっとへヴィだった(ロリ要素が)けど、今回はまぁ健全なのかな、と。。。

それにしてもこの本が爆発的に売れているのが、なにより興味深いです。

で、この作品が、3人称実験の続きだとしたら、登場人物の色とにおいは、どれだけ別の色を与えられていても極めて近い。誤解をおそれずに主観表現すれば、男も女もデルヴォーの絵の中の登場人物のよう。で、春樹作品はそれでいい気もします(どこかクリーンで生々しさがない)。

あ、そだ!19章はちょっと面白かった♪(表現として)。
駅の描写とつくる氏のありようが映像コラージュのようで。
で、読んでると夏目漱石の「それから」を思いだしました。
「忽ち赤い郵便筒が眼に付いた。すると其赤い色が忽ち代助の頭の中に飛び込んで、くるくると回転し始めた。傘屋の看板に、赤い蝙蝠傘を四つ重ねて高く釣るしてあった。傘の色が、又代助の頭に飛び込んで、くるくると渦を捲いた。四つ角に、大きな真赤な風船玉を売っているものがあった。電車が急に角を曲がるとき、風船玉は追懸けて来て、代助の頭に飛び付いた。小包郵便を載せた赤い車がはっと電車と擦れ違うとき、また代助の頭の中に吸い込まれた。煙草屋の暖簾が赤かった。赤出しの旗も赤かった。電柱が赤かった。赤ペンキの看板がそれから、それへと続いた。仕舞には世の中が真赤になった。そうして、代助の頭の中を中心としてくるりくるりと焔の息を吹いて回転した。代助は自分の頭が焼け尽きる迄電車に乗って行こうと決心した。」

氾濫する赤の狂気!

でも、つくるは電車には乗らず、駅をつくっている。

このつきはなし感、対象との距離感が、今回一番の収穫だったかも。

つくるを春樹氏に置き換えれば
この物語は作品をつくることの比喩なのかもしれない、なんて
今ちょっと思いましたデス。

追記:
もう1つ。永遠に続く関係なんてない。
だから今を大切に。

参考:
Liszt, Franz: "Le mal du pays"


マルチメディア化の成功事例
(・・・そして同様にレクサスは売れるのだろうか?)

村上春樹氏の新刊でフィーチャーされたベルマンのリスト:「巡礼の年」
【早くも60万部。村上春樹新刊に登場で問い合わせ殺到、ベルマン演奏「巡礼の年」が今すぐ聴ける】l

Thelonious Monk - 'Round Midnight - 1963



111オススメ音源
EARLY CROSS/Pathfinder:特に6. The Pilgrimage
Blazing Bronze/Dominion of the EAST

※111内「村上春樹」関連記事はこちらからどうぞ


興味深かったレビュー:
【読書感想】色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年(琥珀色の戯言)
深読み「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(本読みな暮らし)
コメント (2)
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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年/読書メモ

2013-05-09 | 
※あくまで一個人の読書メモです。
今後も追記・削除を含む変更あります。

感想はこちらからどうぞ。↓
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年/感想

以下、文章抜粋あり。
内容に関わりますので未読の方はご注意ください。





読み出して数日、かつて「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」を
半日で読み終わった自分はもういないんだな、と気づくところからスタート。

なかなか集中できなくなっている自分が面倒。
これって年齢なのかな?とも思うし、強烈なドーパミン体験をイタプロでしてしまっているその反動もあるだろうし・・・でも、なによりも「対村上春樹バリア」のようなものが自分の中に確実にできてしまっている。

村上作品のいくつか(「ねじまき鳥クロニクル」「神の子どもたちはみな踊る」あたり)には、ひどい傷をおわされた(その傷自体が、私にとっての春樹価値を高めてしまうというアンビバレントな状況をちょっと面白く感じつつ)その強烈なマイナス記憶のせいで、どうも脳にダイレクトに情報がいかないように大量のチャフがばらまかれてる感じ。

で、今回も本の中でBGM的音源が書かれていて。
つべでチェックして、「ふうむ・・・」と思いつつ。
・・・どうも授業のように誘導されてしまうのが面白くない(笑)。
本を読むときくらい、自分の好きな環境でいたい。

で、PCにはいっている音源をランダムに流してたら、
「あ、これがあった!!!」(お師匠様、多謝です)、即CDをセット。
やっと物語世界に入ることができました。

というわけで超個人的読書足跡。

1日目:

メモを取りながら

やたら目に付く直喩に立ち止まりつつ。かえって混乱させられつつ。

「鋭く切り立った尾根が前後の植物相を一変させるように」(P29)
「まるで遠い辺境の地に出征する兵士を見送るみたいに」(P31)
「物理的に理屈の通らない風景を見るみたいに」(P35)←この表現は素敵
「誰かの運勢を見るみたいに」(P38)

「身体の組成が入れ替わっていくような不思議な感覚」(P40)


これはわかるなぁ。実際入れ替わってるのかも。
生命ホルモンとホメオスタシスの葛藤というか。

2日目:
木元沙羅さん。相変わらず春樹氏の描くヒロインは理性的。
そして色をもたない人間がまた1人。

灰田くん登場。相変わらず春樹氏の描く男友達は魅力的。
つねに主人公を補完する関係。

3日目:
BGMと珈琲の香りの中、超透明な音源(春樹氏推奨音源ではありません)のおかげで
ジャミングがなくなって頭がすっきりと物語を吸収しはじめています。

ここからは章だてメモ(※章タイトルはブログ管理人)

7.淫夢
今回はないなー、・・・と思ってましたが、
(またもや)夢の中ですか。うーん、春樹氏のヰタ・セクスアリス欲求は根強い。

彼のなんというか、独特のにおい(青年臭とでもいえばいいのでしょうか?少年期からの永遠の過渡期のようなとどまり感・・・カフカ君でもしんどかったんですが)のある性欲バナシは、あまり得意ではないのだが、これがないと村上春樹物語にならない、というのもあるのかも。なので、BGMの力をかりて読み下す。

8.灰田の退出
再登場を待つことに。

9.優秀な探偵力の沙羅さん
「私たちは基本的に無関心の時代に生きていながら、これほど大量の、よその人についての情報に囲まれている。その気になれば。それらの情報を簡単に取り込むことができる。それでいてなお、私たちは人々について本当にはほとんど何も知らない」(P136)


「しかしそれが基本的に、都合の良い思考システムの催眠的注入であることに変りはない。」P143
このあたりは宗教も同じですね。
アフター「アンダーグラウンド」の価値観が血肉化した春樹哲学。

10アオとの再会
最初のカタルシスと口の中がちょっと苦くなるドラマ。
・・・過剰なレクサス賛歌には意味があるのだろうか?
売上があがるのだろうか?

からっぽ=無色についての“省察”。

「産業の洗練化」P176

11.アカとの再会

「金のかかった匿名性」P181

「『『私は自分の頭でものを考えている』と思ってくれるワークフォースを育成する」P188
「反社会的な人間=建設的な姿勢をとるものは何によらず、頭から受け付けない」同
「もう1つは本当に自分の頭でものを考えられる人間」同
「全体のおおよそ85%」同

パレードの法則の逆利用。理にかなってますな。

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現時点での感想:
物語よりも、重箱にきちんと納められた言葉の質感と配置を楽しんでいる感じ。

きちんと発音された言葉のように、意味を届かせる作業という印象。

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12.六本指と優勢遺伝についての省察と沙羅とのデート

「サークルの完璧性の中の閉じこめられていた」P219

「私たちはあるいはおしゃべりかもしれない。でもある種の秘密は堅く守られる。とりわけ男の人たちに対しては」P221

春樹氏の描く女性のモナリザ的微笑のような空気感は、こうした女性崇拝のような視点から生まれてくるのだろうか。そしてハルキニストな女性達がモナリザ化していくのかも。世の中のモナリザ率が増えると、ちょっと楽しい?

おいしいレモンスフレについて♪

13.足の裏とフォースとともに進むフィンランドの旅計画

「人は日々移動を続け、日々その立つ位置を変えている」P233

「シベリウス、アキ・カウリスマキの映画、マリメッコ、ノキア、ムーミン」P215


沙羅と中年男性の関係は?

14.素敵なオルガ

15.素敵なエリの夫


オルガとエリの旦那様は、この本の中で一番好きな2人かも。
フィンランド人、素敵!と思わず思ってしまった(単純ゆえ;)。

エリ夫妻の陶器、見てみたい。ここの描写は好きだなぁ。。。
誠実な人の誠実さが伝わる描写。

16.クロ(エリ)との再会

エリの告白はすごくナチュラル。だが、多分こういう女性は実在しない。
なので、とっても男性的に見える。

17.クロ(エリ)との語らい

人に関わることの相互侵食。
支えるためには自分自身の足腰がしっかりしていなければならない。
相手に同調・共感はしても共依存してはならない。

「悪いこびとたちにつかまらないように」P326

18.沙羅との再会・前

19.自身との再会


後半はさくさく読めてしまって、メモをとるヒマというか必然がなかった。

19章の入り方は、古いようで新しいようで、面白いな、と思いましたが、
あくまで春樹的にて。

というわけで、重複しますが感想は別途。

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