君と俺とひみつの夜空

「君と俺とひみつの夜空」　RPG・ファンタジー
制作者：イシル様

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝

ちっちゃいお兄ちゃんが、ちっちゃい女の子と繰り広げる、一晩の冒険譚です。

ゲームとしてはごくごく短編ですが、フォルティスの感じる寂しさやモヤモヤ感の表現がうまくて、プレイしながら何かすごく感情移入しちゃいました。
もともと、ちびっこネタとか動物ネタとかに弱いんですよねぇ。
寂しそうなフォルティスくん、大丈夫大丈夫！って頭ぐりぐりなでなでしてやりたくなるわぁ…

話としては、その後、フォルティスくんとサンちゃんが改めて出会う以前の序章、といった作りで、これだけ見てもわからない伏線や、謎な部分が多々ありますが、それは今後出される「ウィザード３０８」のリメイク版に繋がるもよう。
リメイクが待ちきれなくて、今回そちらの旧版もDLしてプレイしてみましたが、これも良かったです。


初作だけあって、ユーザビリティ的には、やや不便な面が目立ちますが、設定とストーリーが面白かった～
もともと、ファンタジーとSFのコラボっぽいのって好みなんだよねん…
新版は、こちらとは設定や内容が全く違うとのことですが、どう変わるのか楽しみです。
おそらく、「君と俺と～」での二人の出会いを盛り込んで、より絆の深い物語になるのではないかと期待中～


しかし、旧作はあまり関係ないとは知りつつも…あの素直で優しいフォルティスくんが、将来ああいう捻くれた男に育つのかと思うと、これはこれで、何か笑いが…！！
そしてウィルが30代で「騎士団長としては若い」と言われている辺りがリアルっぽい目線でイイ。

シェリラベット

「シェリラベット」　お姫様と騎士・甘やかされゲー
制作者：八色いんこ様（cocoon）

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝

「魔女も歩けば悪魔に当たる」や「Crimson_Roots」の作者様ですー。

今作のヒロインは、箱入りおっとりお姫様。
過去作では、気が強い系のヒロインが多めな印象だったので新鮮でした。
そして、そんなヒロインを甘やかして甘やかして甘やかし倒すのは専属騎士と兄王の二人。
代々、国を守ってきた竜との「契約更新」のため、姫…リディアンナは騎士のクワルツとともに、お忍びの旅に出ることになりますが…
普段甘やかされて、何も自分ではできない姫君は、果たして使命を果たせるのでしょうか？
みたいな？

クワルツが敬語キャラ！
丁寧な言葉づかいで中身がアレなキャラは、アヴェリーさん以来の作者様の鉄板でありましょう。
とはいえ、主人公が違うとこうも違うか、というくらい、彼のアレな部分は表に出てきません。
イケメンな騎士がヒロインを常に優先し、とても恭しくかしづき大事にする姿は、プレイしていて気持ちいい（←ｗ）
殆どのシーンは、ほのぼのムードで進んでいきますし、エンディングも可愛めです、が。
…しかし、それだけでは終わらないのが、この作者様、なのです。

最初ノーマルエンドを迎えた時は、いろいろ問題な部分を端折ってるものの、普通に可愛い話だと思ったんですが…二周目でハッピーエンドを迎えて、ゾっとしました。
いや正確には、ハッピーエンド直前の出来事が…；
このルートは、たぶんみんな「今何起こった？？」と思うと思うんですよ。
そして、過去ログなんかを見返して、ある可能性に思いついたとき、血の気が引くっていう。

トゥルーエンドは、クワルツが本当に望んでいたエンドとされてます。
真綿で首を絞めるというか、砂糖も食べ過ぎると毒というか…
プレイヤー目線では「…いいのかな？これ？」と思いますが。
でも、二人とも幸せではあるし…兄王はリディが望むことに何一つ反対しないだろうから、周囲からの邪魔も入らず、終生、問題にもされないことでしょう…

３つのエンドをクリアすると、エクストラが解放されます。
そこでわかるのは、「メインシナリオはリディ目線の物語」だったということ。
リディはあまり深いこと考えないタイプなので、裏の出来事とか事情とか、そういうことは作中で語られないんですよね。
あっ、こういう設定だったんだ、といろいろビックリするとともに、これを見た後だと、メインシナリオを見る目が変わります。いろんな意味で。

基本、バッドエンドはなくて、どれもリディは幸せなまま終わるんですが…
なんていうか、すごく微妙な気分になるゲームでした。
ある意味、「愛情という名の飼い殺し」とも言えるこの状況。
けれど、男の側に、最後の最後までちゃんと守りきれるだけの力があるなら、こうして、ただ甘やかされて生きるのも悪くはないかも？なんて思ってしまった…

ただ、こういう幸せを享受するには、リディのように、何も見ず聞かず考えず、愛する人だけを信じて、世の穢いものを知らないままで疑問は持たない…そんな才能が必要なのかも、ね。
とりあえず、疑念と深読みと妄想で頭がいっぱいの私には不可能事でございます…


短編ゲームにもかかわらず、なにかすごく「濃い」話でした。
甘いばかりじゃ物足りない、大人の乙女様がたにおすすめです。
ハッピーな雰囲気の裏に流れる、なんともダークな雰囲気を、ぜひお楽しみください～