鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

セブンテットクロス

2017-01-06 12:58:08 | フリーゲーム(ホラー)
「セブンテットクロス」 刑務所脱出ゲーム・微ホラー
制作者:皐月の夢様(有限の遑

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今までは乙女ゲを中心に活動されてた方ですね~
何作も手掛けてきただけあって、システム面は安心のつくり。
絵もキレイだし、キャラもそれぞれ魅力的です。

今回の主なステージはなんと刑務所!
連続殺人の冤罪を受けた主人公・ユシアが、同じ棟の囚人たちと関わりながら、
なんとか脱獄しようと頑張る、探索ADV。
主人公が女性で、あとの囚人は男ばっかりということで、
あれ?もしかして相手選べる?刑務所乙女ゲ?? と一瞬思いましたが、
シナリオ上、それっぽくなるのは一人だけ&糖度は低め。
乙女ゲに抵抗のある人でも、十分プレイできます。

囚人たちがみんな、なかなか個性的で良い感じ。
今までのゲームの中で一番キャラ数多いんですが、
メインシナリオをすすめる中で、それぞれが犯罪に至る事情も語られるうえ、
見せ場も個々に作られ、きちんと書き分けられております。
メインはユシアとキースの活躍ですが、そのほかの5人も、
決してその他大勢では括れない、いい味出してますよ~

ユシアと絡みの多いキースは、特に魅力的でかっこいい。
主人公が危機的なとき、必ず助けてくれるヒーローキャラクター。
詐欺師でウソツキ&ちょっと意地悪だけれど、
決して芯まで捻くれていないところが (・∀・)イイ!!

あと、個人的にはサイラスも好きですね。素敵オヤジ…!
乙女ゲ作者さんって、攻略対象の若い男の子のキャラは得意でも、
脇役の中年男性を魅力的に作れる人ってあんまりいないかも。

エンディング後の様子も、全員が解放されてオワリではなく、
それぞれの個性?性癖?に合わせ、刑務所に残るものは残り、
出るものは出る、という現実的な展開がいい感じ。
…放火魔のあの子はちょっと危険すぎて出せないもんねぇ。

それほどホラー要素は強くないんですが…ちょっぴり猟奇な部分がありますね。
あとは、ちょいちょい出てくるあのキャラの存在ぐらいでしょうか?
彼はエンド分岐に関わるので、見かけたら親切にしてあげましょう。

…ていうか、とにかく探索さえしっかりしておけば、
まずトゥルーエンドを外すことはないと思うな。
謎解きも、ちゃんとゲームの中のヒントで解ける範囲…だったと思う。

ちなみに、私が一番悩んだのは…うさぎ!
これ、時間制限付きの上、個別のヒントないんで焦るんですよ。
実は、その直前の謎解きのヒントを別な形で使いまわして解きます。
文字と数字の規則性を探すのだ!
どうしてもわからなかったら、作者様サイトの攻略をどうぞ。





しかしこんな女日照りの環境で、野放しの自由時間がいっぱいあるのに、
何事も起こらないなんて、ここの棟の囚人超紳士だわ…

Steel howling

2017-01-06 11:20:14 | フリーゲーム(ホラー)
「Steel howling」 サイコホラーADV・ヘヴィメタル
制作者:Achamoth様(公式サイト

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「PUB」の方の新作です。
うん、面白い…そして、とても深い。
今回もメッセージ性が強くて、やりごたえがありました~
こんな風に、自分の好きなものを「どうだ!」とガツッと打ち出してくる姿勢、好きだわぁ。


芸術は、それを「発信するもの」と「受信するもの」がいて完成するものですが、
特に、音楽の分野はそれがハッキリしているように思います。
ある人が聞いて涙した曲も、ほかの人が同じように感動するとは限らない。

ただ、どんな表現も、人間の感情や思考に基づくものである以上、
たとえばそれが作られた時代背景や、作った人の人生、
それに影響を受けた出来事や人々…を知ることで、
ある程度の共感…歩み寄り?はできるのかもしれません。

メタルのような激しいロックに関して、私はどうやら受信回路を持ってないらしく、
さほど進んで聴きたいとは思わないのですが、
このゲームの根底に流れるロックな「精神」…「魂」?は実に魅力的でした。


主人公は「ジョナサン」と「ジューダス」、そして「ジェシカ」のJ三人組。
物語は、3人が縛られた状態で、見知らぬ家に監禁されているところから始まります。
グツグツ煮える鍋の中には、吐き気を催すような料理。冷蔵庫には謎の肉片。
ジョナサンよりも先に目覚めていた二人は口々に言います。
ここは殺人鬼の家なのだ、自分たちは殺されるのだ、と。

ジョナサンルートがけっこう血塗れでアレなので、
ホラー耐性のある方でないと、プレイは難しいかなぁ。
ジョナサンとジューダス、それぞれのエンドを迎えると、
ジェシカルートが解禁され、トゥルーエンドに行きつける感じ。
一つエンドを迎えると、ジェシカの独白で次へのヒントが入るので、
攻略はそんなに難しくないんじゃないかな。

表面穏やか内面猟奇趣味のジョナサンと、表面暴力的で内面信仰深いジューダスの
男二人は、選択肢も行動も対照的ですが、単純に善悪で分かれているわけでもなくて。
どちらかというと、同じものであるけれど、表面への出方が違うだけの…
明暗ひっくりかえったネガポジ?的にも見えますねぇ。

ただ、暴力的な性格はともかく「常識を大きく逸脱しない」ジューダスは、
受け入れられやすいキャラだと思います。
血塗れで、選択肢がいろんな意味でショッキングなジョナサンルートのあとに
ジューダスルートをプレイするとホっとする…ある意味心のオアシス。
もし、ジョナサンルートしかなかったら、一般常識と乖離しすぎてて、
共感の難しいゲームになったかもしれない。

3つの選択肢…自分だったらどうするかな?
最初の二つは、ココロに余裕があるうちはき拒否するだろうけど、
(モラルの問題ではなく、たぶん、見るのも触るのも気色悪いという理由で)
物凄く追い詰められたら……わかんないね。
最後のは…まあ、状況と種類によるけれど…その必要がなければ殺さない。

そういえば、ちょっと検索したら、ジョナサンは似た感じのボーカルが実在しましたが、
ジューダスやジェシカも、もしかしたら誰かモデルがいるのかな…
もともと好きな人だと、いろんな符丁に気が付けて、もっと楽しめるのかもね~



メタルを聞いて思うのは、歪でも、醜くても、地に這って泥を食んでも、
「自分はここにいる」と叫ばずにはいられない、突き上げるようなエネルギー。

人は恐怖を好み、悲劇を好み、破滅を求める。
ですが、それは単なる野次馬根性だけではなく、
それを見極め、越えて、さらに先へ進もうとする力であると思います。
死と生とは表裏一体のもの。
死の定義を知ることは、生の定義を知ることでもありましょう。

どんな問いにも、神父はただ頷くのみ。
残酷な物語も、歪んだ想いも、悲惨な事件も、そこに何を見出すかは、自分次第なのです。



ヘヴィメタが好きな人も嫌いな人も、
ホラー…というか猟奇耐性のある方におすすめですぞ。