降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★「北海タイムス物語」を読む ㉝

2016年01月15日 | 新聞

( きのう1月14日付の続きです。写真は本文と直接関係ありません )

小説新潮に、増田俊也さん(50)の「北海タイムス物語」が連載されている。
僕は以前、北海タイムスと提携していた「日刊スポーツ北海道」に知人がいたので、札幌の北海タイムスに何回か行ったことがあった。
というわけで、増田さんの青春物語@新聞記者編ともいえる同小説に注目した——の第33回。

*増田俊也(ますだ・としなり)さん
1965年=愛知県生まれ。
1989年=北大中退後、北海タイムス入社。
1992年=中日新聞に転社、中日スポーツ記者。
2006年=『シャトゥーン・ヒグマの森』で「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞受賞。
2012年=『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったか』(新潮文庫)で大宅壮一賞、新潮ドキュメント賞をダブル受賞。
ほかに、自伝的青春小説『七帝柔道記』(角川書店)など。
*北海タイムス(ほっかいタイムス)
1901年=北海タイムス創刊。
1942年=戦時統合で北海道新聞に統合。
1946年=道新僚紙として「夕刊北海タイムス」再刊。
1949年=「北海タイムス」に改題。
1962年=東京の日刊スポーツ新聞社と提携、日刊スポーツ北海道版を発行。
1998年=9月1日自己破産、2日廃刊。


( 小説新潮2015年11月号 292ページから )
一番奥に〈 編集幹部 〉というプレートが下がり、平社員の二・五倍くらいある大きな机が二つあり、編集局次長の萬田さんと編集局長❶が座っていた。
松田さんは僕の目の前で両腕を組んで眼を閉じて❷いる。いつのまにか眠っているようだった。
浦ユリ子さんは黙ってファッション誌をめくっていた。
他の同期は文化部の女性記者たちを見て何かを話していた。
社会部の机のほかにもぽつぽつと女性がいるが、記者なのかアルバイトなのかはすぐわかった。
女性記者は黒か紺のパンツスーツかスカート姿だが、アルバイトはジーンズをはき、上も派手目❸の服を着ていた。
僕はそんなことに興味がないよという風を装いながら、ときどき浦さんを見た。
しかし彼女は一度も顔を上げず、ずっとファッション誌を読んでいた。



❶一番奥に〈 編集幹部 〉というプレート……編集局長
前回(きのう1月14日付)と同じく、新入社員・野々村くんが見た北海タイムス編集局の様子。
各部のシマに〈 ◯◯部 〉と記した白プレートが下がっているのが分かる。
僕が意外に感じたのは、1990(平成2)年当時の新聞社だったら、あったであろう
⑴ 大きな時計
⑵ 降版時間表

が野々村くんの目に入ってこなかったこと(ほかに共同通信スピーカーも)。

⑴ 大きな時計=JRの駅ホームなどに下がっているのと同じくらいの、直径65cmほどの大時計。白盤に黒数字表記で、デイトは無い。
編集局内(制作局にも)どこからでも視認できる位置に天井から吊り下げられたり、壁にかけられていたはずだけど……。
⑵ 降版時間表=整理部ちかくの天井から下がっていた(と思う)。
A版=◯面22:15、◯面22:10
B版=◯面23:45、◯面23:40
C版=◯面01:45、◯面01:40……
各版各面の降版時間が表示され、整理部だけでなく出稿からも見えるようになっていた(無くてもいいのだけど、まぁ、たいがいの新聞社編集局にはあったかなぁ、という感じ)。
ちなみに、北海タイムスの夕刊は複数版とらない1版止め=初版止めだった。

❷眼を閉じて
おなじみの新聞用字用語集「記者ハンドブック」では、
め(眼 ● )→目
とあり、「眼」は漢字表にない音訓だから「目」と書きましょう——としているが、著作物なのでかまいませんよ(←エラそうだな)。

❸派手目
再び、新聞用字用語集「記者ハンドブック」では、
め[ 主に形容詞語幹の接尾語として度合い・加減・性質・傾向の意を示す ]
厚め・薄めの色・大きめ・抑えめ・遅め・固め・控えめな態度・低め……

とあり、新聞表記上では「派手め」になるが、著作物なのでかまいませんよ(←ホントにエラそうだな)。

——というわけで、続く。