降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★「北海タイムス物語」を読む ㉜

2016年01月14日 | 新聞

( きのう1月13日付の続きです。写真は本文と関係ありません )

小説新潮に、増田俊也さん(50)の「北海タイムス物語」が連載されている。
僕は以前、北海タイムスと提携していた「日刊スポーツ北海道」に知人がいたので、札幌の北海タイムスに何回か行ったことがあった。
というわけで、増田さんの青春物語@新聞記者編ともいえる同小説に注目した——の第32回。

( 小説新潮2015年11月号 292ページから )
経済部、運動部などの島は昨日来ていた部長たちが座っているだけで、平社員は一人もいない。
社会部長の前だけは四十代前半くらいの人がせわしく作業している。おそらく夕刊デスクの人なのだろう。
アルバイトらしき女の子もひとりいて、なにやら書類仕事❶をしていた。
あちこちの壁に〈 団結 〉〈 北海タイムス労組 〉〈 満額回答死守 〉などと書かれた赤いビラが貼ってある❷のがやけに目立つ。
一番奥に〈 編集幹部 〉というプレートが下がり、平記者の二・五倍くらいある大きな机が二つあり、編集局次長の萬田さんと編集局長❸が座っていた。
松田さんは僕の目の前で両腕を組んで眼を閉じている。いつのまにか眠っているようだった。
浦ユリ子さんは黙ってファッション誌をめくっていた。


❶アルバイトらしき女の子もひとりいて、なにやら書類仕事
おそらく庶務の女のコ。
懸賞はがき、投稿、郵便物などを処理しているのだろう。
整理部や出稿部が使う原稿用紙、メモ帳、ボールペン、鉛筆、封筒など備品の補充も忘れないでね。

❷〈 団結 〉〈 北海タイムス労組 〉〈 満額回答死守 〉などと書かれた赤いビラが貼ってある
北海タイムスは発行部数20万部も、慢性的に経営難だったという。
この不安定さが組合の赤いビラと闘争用「砂入りバケツ」事件につながるのだろう。
*組合=整理部先輩に誘われ、僕も労働組合の仕事を手伝ったことがあった。長くなりそうなので、後日書こうっと。

❸一番奥に〈 編集幹部 〉という……編集局長
このあたりの記述は、新入社員・野々村くん(小説主人公)が見た北海タイムス編集局の光景。
どこの新聞社も(たいてい)各部に〈 ◯◯部 〉の白いプレートが下がっているのだが、1990年当時ならあるべき〈 ある2つのもの 〉に言及していないのが、オヤ?だった。
作者・増田さんが省略したのか、野々村くんの目には入らなかったのか——長くなったので、続く。