イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

見た!日本人の前衛作家、世界的人気の草間彌生の水玉アート展

2023年08月21日 05時30分08秒 | マンチェスター

評判の、「草間彌生 あなたと私と風船 YAYOI KUSAMA YOU, ME AND THE BALLOONS」 展に行きました。

 

マンチェスターのシティセンターのはずれ、ディーンズゲイト・カスルフィールド Deansgate Castlefield という、小舟の停泊地が入り組んだ運河沿いの水辺のエリア、古代ローマ時代の城塞の遺跡の残る興味深いエリアに新しくオープンしたイベント・センター、Aviva Studios が会場です。

 

(写真2枚はディーンズゲイトの景観です)

入館日時指定の入場券は発売と同時にほぼ完売。知識層の愛読新聞紙のアート欄がこぞって絶賛する日本人女流作家による現代前衛アート展!!

上に座ったり寝そべったりできる Cloud 雲 (写真☝)以外は全て過去の作品の寄せ集め...と言うか草間自身がアレンジ、プロデュースした展示らしいです。

すべて、空気を入れて膨らませた巨大オブジェの展示会です。

15分刻みの入場時間を予約する仕組みですが、会場には好きなだけいてもいいようです。

誘ってくれた友人が、空きのある時間枠をみつけ、予約してチケットを取ってくれました。

 

日本人の女性アーティストが全世界でもてはやされるのは嬉しいです。

現代アートに特別関心があるわけではない一般の人まで夢中にさせる草間彌生の魅力とはいったい何なのか...実はちょっと気になっていたのです。いかなければ!

 

「天真爛漫」とか「無邪気」と表現され、高評価を得た現代アートは私に言わせれば、その時点で「無邪気」ではなくなるはずです。

来館前に、日本語のウェッブサイトでちょっとだけ草間彌生の人となりと芸術についてリサーチしてみました。ああ、幼少期から幻覚や幻聴を体験してきた人だったんですね。この頃あまり聞かない表現、「天才と狂気は紙一重」、いい得て妙。

「もしかしたらその無邪気はホンモノかも!」という期待が膨らみました。

とにかく、私はこの展覧会から彼女の作品の好悪を述べるつもりも批評するつもりもありません。

楽しかったです!作品の意図やアーティストのメッセージを受け止める、という美術の本質と向き合う行為は最初からあきらめていました。

ただ...黄色に黒の水玉模様のタコの脚(じゃなくて、希望の水玉)がにょきにょき生える「無限空間に埋葬された希望の水玉が永遠に宇宙を覆う」小部屋を通って、会場全体を見下ろせる中二階に上がって...

下に降りて広い1階展示場を歩き回って...

タマコロの中の無限空間をのぞき込んで...

 

20分並んで四方と天井、床が鏡張りの球体の小部屋に入って無限空間体験をしておしまい。100% 私個人の感想ですが、これで入館料15ポンドは高いと感じました。

パブリック・アート的に無料で公開してグッズ販売などで利益を上げる方法もあったはずです。

そして、「その無邪気はホンモノかも!」とはどうも思えない気がしてきました。「この表現方法が好評だから続ける」のが本当に無邪気なのでしょうか。

ピンクの髪にピンクの水玉のブラウスを着た草間が御詠歌のような悲しい節をつけて歌うビデオが無限ループで流れ続け、楽しい雰囲気の会場に暗い影を差していました。

日本語なのに不明瞭。「天国への階段~」とか「三角の扉をうちやぶり...」と, ところどころ不穏なフレーズが聞き取れたのが不安をかきたてました。...帰宅後みてみたウェッブサイトの解説の英訳によると、アーティスト本人のうつ状態時の自殺願望をうたっていたようです。

1年前、ゴッホの生涯と多彩な作品をコンピュータ映像と圧倒的な音量の音楽を駆使して紹介する「アートショー」Van Gogh Alive 展を見てきたことを思い出し、比較してしまいました。

その時の入館料の23ポンド50ペンス、高かったのですが払った分だけじゅうぶん堪能した記憶があります。

ゴッホも精神疾患を患っていたのでした。誰にも理解されない激しいタッチの絵を命を削って描き続け、37歳で自殺したゴッホの生涯が悲しすぎました。生きているうちに売れた絵はたったの1枚、なんて気の毒なんでしょう!

前衛で若い頃から高い評価をうけ、生きている間に世界的名声を得た草間彌生の展覧会を見て思ったこと;

「表現方法の多様化が評価される現代はいい世の中だ」。

 

作品といっしょに写真が撮れる、というのも人気のポイントのひとつなのかもしれませんね。「インスタ映え」しそうです!

 

ゴッホのアートショーに関する ストックポート日報 の記事リンクです☟☟。

徹底的に不遇だった天才画家の足跡をたどる、大人気の斬新なアートショーに行ってきた

 

そして、もうひとつ。

空気を入れて膨らませた作品群は、手を触れてみたくなりますがさわれません。アートですから。抱きしめたり、押し倒したり、パンチバッグのように力いっぱいぶちかましてみたくなります!

子供連れの家族がたくさん来ていましたが、作品に手をふれる子や走り回る子はまったく見かけませんでした。

概して言えば英国の小さな子供たちは親と一緒の時、とても聞き分けが良いのです。アート展に子供を連れてくる(文化的な)家族を英国社会全般の例として語るのは無理があるかもしれませんが。

国民全体が礼儀正しいことで知られる日本人ですが、子供の振る舞いに関しては別だと思います。3ヵ月の日本滞在時に、店の中で走り回ったりぐずったり親の関心をひこうと大きな声で同じことを繰り返して言い続ける小さな子供をけっこう見かけました。

 

 

 

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2 コメント

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犬と暮らせば (浅井洋)
2023-08-21 14:50:37
大丈夫ですよ
 僕は もう 退職してから 5年経ちますが
  大学時代 の 学生さんの 誰に 聞いても
   名前もしらなきゃ 作品もみせてるも
 どうして是が が 学生さんの ほとんどで
  
ビルの上に 風船載っけても
  ルイビトンが ユニクロにまけて
   日本を パクろうと しただけで
 国内の若者の 評価は 零に近いですが
  お仕事に(デザインを)してる方には
   パリから ヨーロッパから 
   お金の取れる  素晴しい方なのでしょうね

 
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浅井さんへ (江里)
2023-08-23 04:19:30
浅井さん、貴重なコメント、ありがとうございます!
学生さんの「どうしてこれが」正直な意見が聞けました。
若い人たちって「前衛アートがわからない」ってあまり言いたがらないものだと思っていました。
私は美大卒ですが...お恥ずかしながらわかりません!
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