商店街がある賑やかなバス通り沿いに、かやぶき屋根のコテージ thatched cottage があります。
バス通りをはさんで向かいには駅、図書館、診療所があります。
3年前に記事にしました。☟
商店街の始まりにかたまって残るかやぶき屋根のかわいらしいコテージ、イギリスの原風景?
じつはもう3週間も前の話ですが...(3週間前に撮った写真と、火曜日に撮った写真が混在しています)
図書館から出た時に、このコテージの奥にある、同じくかやぶき屋根のー棟の長屋の屋根にターポーリン tarpauli(防水シート)がかかっているのが目につきました。
「何事だろう」と道を渡って行ってみました。
かやぶき屋根、いつの間にか取り下ろされているようですね。荒み方もすごいです。
ちょうど表通りに面した目立つコテージ、「ベンジャ・コテージ Benja Cottage」...
...に住む高齢女性(以下、ベンジャおばさん)が家の前の落ち葉を掃除していたので事情を聴きました。
ちなみに、この1棟の長屋には「クロッカス・コテージ Crocus Cottage 」という登録名があります。
「ベンジャ・コテージ」とともに、第二級保存指定建築 Grade II listed Building, National Heritage List For England です!建造は17世紀。書類等はなく考古学研究に基づく推定だそうですが。帰宅後、郷土建築史のウェッブサイトで調べました。
☟細長い箱のようなのは、「井戸」のポンプです。
ベンジャおばさんが「もう10年近くこの状態」と言っていたのはかん違いです。3年前のストックポート日報に完璧な状態のかやぶき屋根の写真を載せています。上のリンクをあけて写真を見てください!
ベンジャおばさんと親しくしていた「クロッカス・コテージ」の(現在ボロボロの右端部分の)持ち主は高齢で古い家の維持が難しくなったので10年ぐらい前に現在の持ち主の男性に家を売り、息子の家のそばに引っ越したそうです。10年前に引っ越したのは事実かもしれませんが、たったの3年前までは立派なかやぶき屋根は健在でした。
...3年前に私が写真を撮った後に、おそらく現在の持ち主が引っ剥がしてしまったのではないでしょうか。その後葺き替える予算が底をついたとか...?保存指定建築ですので、お手頃ななタイル瓦などを載せるわけにはいきません。
ベンジャおばさんと今は亡き旦那さんがベンジャ・コテージを買ったのは20年ほど前、歴史遺産の現状維持に心を砕いてきたそうです。
保存指定建築を好き勝手に補修、改装することはできません。...と言ってもベンジャ・コテージは、17世紀の建造物でありながら19世紀にかなりの部分が、17世紀のスタイルで(ほぼ)忠実に補修改装されているようです。(ウェッブサイト調べ)
5~60年ごとのかやぶき屋根の葺き替え時期はまだ先、10年ちょっと前にいたんできた藁を抜いて部分的に取り換える作業をしたそうです。
ギルド資格を持つ、通いで作業できる地元の職人にたのんだら仕上がりが気に入らず、イングランド中部を拠点に国中を旅してまわる評判の良いかやぶき職人ー家(お父さんと息子3人)に依頼しなおしたそうです。
数日、裏庭にテントを張って泊りがけの作業で、食事は依頼主が提供。満足のいく仕上がりで数年後にまた依頼する予定だとか。
カギ型のクロッカス・コテージの奥の部分は以前からスレート瓦葺きです。ボロボロ部分に住んでいた、ベンジャおばさんの知り合いとは別のご家族が住んでいるようです。不動産ウェッブサイトによるとー時売りに出ていたので、比較的最近に越してきたのではないでしょうか。
外から観察したところ、ボロボロ部分の並びのもう1軒分までそのご家族が住んでいるらしいことが察させられました。(上の写真の、電灯がついているドアが入口だと思います)
ベンジャおばさんも、ターポーリンに覆われた見苦しい隣家の歴史資産のようすに心を痛めていました。かやぶき屋根の葺き替えが待たれます。
ドアの数から察するに...3軒長屋の様相です。
となりの、戦没者慰霊塔も第二級保存指定建築だということをウェッブサイトで調べて知りました。
この「戦没者慰霊広場」から、ベンジャ・コテージの裏側がー望できます。
かなり長いこと、戦没者慰霊広場に面した板塀が倒れていて、修繕する気配もありません。
ベンジャ・コテージとクロッカス・コテージのあるバス通りから引っ込んだ小道には、ベンジャ・フォールド Benja Fold と言う古風な名前がついています。fold とは「囲い込まれた土地」と言う古語だそうです(今調べました)
ベンジャ・フォールドは、バス通りと平行に走る高級住宅街に通じています。小川の流れるうっそうとした雑木林を抜けるタイムスリップしたような小道です。クロッカス・コテージの脇を走っています。この話はまた今度。