イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

イギリス北部の地名を冠した、ご当地以外ではあまり知られていないはずの、お菓子2種

2017年08月22日 09時00分00秒 | 英国のお菓子とデザート
マンチェスター・タート Manchester tart


もしかして、おぼえていてくださった方もあるかもしれません。
2015年のストックポート日報の、「まぼろしのマンチェスター・タート」の記事を・・・

その時に載せた、「まぼろしのマンチェスター・タート」の写真です。


そもそもマンチェスターが発祥の、イギリス北部で好まれて食べられていたらしい、マンチェスター・タート、戦後は、北部を中心に、1980年代初め頃まで学校給食で供されていたとか。

学校給食で出されなくなって以後、急速に人気がすたれ、今では作っているのは、マンチェスター・フード・マーケットに露店を張っている、上の写真のこの店だけ・・・・という話題でした。

50代以上の年配のイギリス人が目を細めて懐かしがる幻のケーキ・・・テレビでもこの店が紹介され、話題になりました。

とは言え、それから2年足らず、復刻マンチェスター・タートは今では、スーパーでも、一部の町のベーカリ―(パン、焼き菓子屋)でも作って売られています。

もう、まぼろしでも何でもない。

ラズベリー・ジャムと たっぷりのカスタードクリームがショートクラスト・ペイストリー(バターたっぷりの甘いビスケット状のパイ皮)に詰まっています。
マラスキーノ・チェリー(毒々しい赤の砂糖漬けチェリー)と、乾燥ココナッツの粉かフレークは欠かせません。

装飾性豊かなケーキで、アレンジにはバリエーションがあるようです。

甘くて、くどいです。
くせになるおいしさ、だという人ももちろんいます。
もしかしたら、マンチェスターを中心にした、イギリス北部でしかお目にかかれない地方色のあるお菓子かもしれません。



話変わって・・・ヨークシャー・パーキン Yorkshire parkin (perkin) 。


これは、歴史的には、「イギリス北部でしか食べられていない」それもごく最近まで、完全に地方限定の庶民の味・珍味だったはずなのです。

単にパーキンと呼ばれることもあるそうですが、ヨークシャーでよく作られたことから、この名が定着したそうです。

イギリス国外では、まったくといっていいほど知られていないはずのケーキです。

それどころか、北部以外で知られるようになったのは、ここ10年来だと、以前働いていたレストランに秋冬限定でパーキンを納めていた手作りのケーキ屋さんから聞きました。

ところが、日本では非常に名の通った、「イギリスのお菓子の代表のひとつ」にも数えられているというではありませんか!

ウィッキぺディアでは、ユダヤ語の他に、日本語の記述があるのみ。
日本語のウェッブサイトで、パーキンに関する説明や、レシピが数かぎりなく見つかります!


なぜですか。調べたけど判明しません。

ハリー・ポッターが好きだというので話題になった「糖蜜パイ」のように文学や漫画、あるいはテレビドラマ、芸能人由来のエピソードがあるのでしょうか。ご存知の方、ぜひ教えてください!

ロビンフッドの頃からパーキンという名で焼かれて食べられている古い古い、お菓子だそうです。

オートミールとブラック・トリークル(糖蜜)が主な材料で、必ず、ジンジャーパウダーがたっぷり練りこんであります。

歴史のあるお菓子ですが、甘みがつけられるようになったのは砂糖がイギリスで消費されるようになった17世紀以後。

砂糖を精製する過程で出た搾りかすを利用した安価な副産物、トリークルと、精白した小麦粉のパンを買うことのできない貧乏人がかつて常食にしていたオーツ麦(オートミールの原料)が主な材料。

もともとは、北部の工業労働者が家庭で焼いて食べていた、貧乏ケーキ・・・。

19世紀の中ごろまではオーブン(かまど)は一般家庭ではぜいたく品だったそうなので、もともとは鉄板に延ばした材料を直火で焙って焼いていたそうです。

そのままではぼそぼそしてまずそうです。
何日か置くと、トリークルが作用して、ねっとりじとじと湿り気が出て、食べごろになったようです。

ジンジャー風味のお菓子の常として、なぜか秋冬にだけ食べられるお菓子です。

7月に用事で出かけた、ヨークシャーの町、ハダスフィールド Huddersfield の住宅街で、突然夫がトイレに行きたくなり、行き当たりばったりで入った、ティールーム。


中は、びっくり、豪華です。


暖炉の中にディスプレイされてあった、陶器のナシ(売り物のアートでした)が気に入って写真を撮りました。

外から見てもわかりませんでしたが、天井の低い、17世紀のコテージだとか!

それはともかく、夏に見かけて意外に感じた、お店の手作りヨークシャー・パーキンを注文してみました。

本当は、お茶だけ飲んでトイレを借りる目的で入ったのですが、ヨークシャーの観光地ではない、普通の住宅街で、本場のパーキンを味わって帰ることにしたのです。

おいしかったです。

本来の貧乏食イメージは、払底。

ビロード張りのソファーに座って、しっとりフカフカのパーキンをカプチーノを飲みながら食べました。


ハダスフィールドは、リーズのそば、イギリス北部の典型的なヴィクトリア時代に栄えた工業町です。
当時のたてものがよく残る興味深い街です。
ヨークシャーは、今も昔も、物価(特に不動産や家賃が)北部の他の地域に比べて安いことで知られています。

それにしては、このカフェ、お値段が高く、雰囲気が優雅でした。


同じ通りにならんでいた、19世紀のフラット(アパート)。




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コメント (2)
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