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ハーバード大学講演30周年に寄せ

2021年09月29日 | 妙法

ハーバード大学講演30周年に寄せて③完 池田国際対話センター ケビン・マー所長2021年9月29日

  • 「内なる心」を開発する哲学の復権へ 開かれた対話の場を築く

 私が所長を務める池田国際対話センターは、人類が直面する諸課題の解決の方途を、創立者・池田先生の平和の哲学に基づき、対話を通して探求する機関です。
  
 センターは先生のハーバード大学での1回目の講演(1991年)を契機として設立構想が進み、2回目の講演(93年)の際に発足しました。担うべき活動と使命については、池田先生の2度の講演の中に示されています。
  
 1回目の講演では、個人の内発的な力を開発し、社会に変化を促す視点に言及され、人間自身の変革がなければ、どんな平和構築の取り組みも達成し得ないことを訴えられています。
  
 2回目の講演では、平和と人権の確立のために「開かれた対話」の重要性を指摘されています。
  
 こうした人間の内面に着目するアプローチを実践しようと、センターではさまざまなイベントを実施してきました。
  
 例えば、池田先生の思想と行動を踏まえ、希望の未来を開く方途を学際的に語り合う年次フォーラムや、池田先生の思想・哲学をテーマにした、著名な学識者による講演会です。さらに、他の学術機関と協力した出版活動や、大学院生を対象にしたセミナーなどを行っています。

30年前とさほど変わらない状況

 1回目の講演を見直して感じたのは、30年前と現在の状況がさほど変わっていないということです。経済格差の拡大や資源を巡る国家間の紛争、気候変動の脅威などによって、社会の分断や不寛容の傾向が強まり、狭量なナショナリズムや暴力行為も顔をのぞかせます。池田先生が促された“全ての生命が密接に絡み合うことを認識し、他に貢献する”行動は非常に意義深く、社会の変革の道はそうした精神の発露にあると言えるでしょう。
  
 先生が示された視座から未来を見据えたときに、若者を変革の主体に位置づけることが肝要ではないかと感じます。池田先生の言葉には青年を勇気づける哲学があります。私は20代の時に先生の思想に出あい、現実に幸福をもたらす“生きた哲学”に感動しました。1回目のハーバード講演を初めて学んだ時には、一部の専門家にしか現実を変えられないと信じていた自身の認識が変わり、誰もが変革の主体者であるとの確信を強めました。

米マサチューセッツ州ケンブリッジ市に立つ池田国際対話センター。多彩な識者を招いてのシンポジウムの実施や書籍の発刊など幅広い活動を展開する
米マサチューセッツ州ケンブリッジ市に立つ池田国際対話センター。多彩な識者を招いてのシンポジウムの実施や書籍の発刊など幅広い活動を展開する
青年が友情を結び合う場に

 センターでは、対話を重視する池田先生の哲学を実践すべく、ボストン地域の学生や社会人との交流を深め、青年が友情を結び合う場を設けています。
 2017年に開始した「ダイアログ・ナイト(対話の夕べ)」はその代表例です。
  
 これは、若手の専門家や学生が「共に希望を生み出すための対話の役割」など、社会課題としてホットなテーマについて議論するものです。コロナ禍の中でも、オンラインを駆使しながら継続して実施してきました。ほかに、第一級の学者と若者が世代を超えて交流し、学び合うパネルディスカッションも行っています。
  
 これらは地球的課題を討議する画期的な手法であると思います。ある学識者は「学生と教師といった固定化した立場を離れて、青年と議論ができる素晴らしい機会」と評価していました。
  
 対話センターのあるボストン地域は10万人以上の学生が集まる、“青年の可能性”を育む場と言えるでしょう。専門性を有した学識者と将来を担う青年リーダーが対話し、平和の文化を築く――これがセンターの使命です。この実践を貫くことで、「ソフト・パワー」の源泉たる“友情”が生まれていくと確信しています。
  
 哲学者のエマソンやソローが青年時代を過ごし、アメリカにおける精神のルネサンスが始まった地域であるボストンから、先生が1回目のハーバード講演で訴えられた“内なる心を正しく開発するための哲学の復権”のうねりを広げるために、これからも努力を続けていく決意です。

プロフィル

 米ボストンで生まれ育つ。マサチューセッツ大学ローウェル校卒。2002年にボストン21世紀センター(現・池田国際対話センター)のスタッフとなり、プログラムディレクターなどを経て、21年から現職。

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