興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学博士、黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

感情をきちんと表現して処理すること

2024-07-17 | プチ精神分析学/精神力動学
 PTSDなどのストレス障害やうつ病などを含む、多くの精神疾患は、ある種の未解決な感情と関係している。もちろんそれが全てというわけではないけれど、未解決の感情が我々人間の心身に与える負の影響はとても大きい。

 精神疾患までには至らなくても、未解決な感情により起きている心の問題や、その心の問題に派生する行動面の問題や身体症状も多い。

 精神力動的な心理カウンセリングがどうしてあらゆる心の問題に対して効果的であるかというと、その理由の一つに、例えば認知行動療法が「認知レベル」で対応するのに対して、心のより深いレベルの「情緒、情動、感情」に重きを置いている点があると思う。

 興味深い事に、認知行動療法の進化型で、近年話題の「スキーマ療法」は、まさに精神分析学や精神力動学的な要素、つまり情緒面への焦点化や、治療関係そのものを使った部分的育て直しを、従来の認知行動療法に統合していて、実際、スキーマ療法の創始者も、そのように公言している。従来の認知行動療法では全く歯の立たなかった人格障害や複雑性PTSDなどにも効果が見られるのはその為だろうと思う。

 前置きが長くなったけれど、人は、多くの場合、自分自身の未解決な感情について無意識である。

 無意識ではなくても、そこから意識的に距離を置いて、手付かずのままの場合が多い。それがその人にとって心的に脅威であったり、どのように扱えば良いのか分からないからだ。

 そういうわけで、サイコセラピーが始まると、遅かれ早かれクライアントさんと私が一緒にするのは、その人の心の中に、どのような未解決な感情が存在するのか探索して特定していく事だ。

 特定した感情は、時間を掛けて、丁寧に注意深く、その安全で信頼感のある治療関係の中で語られ、十分に表現される事を通して適切に処理されて、受け入れられ、解決していく。そうした感情は、余すところなく表現されて経験されないと、未消化なままずっと残っていてその人の心を蝕んでいくからだ。

 こうした感情は、センシティブなものなので、正しい環境で正しく処理される必要がある。過去に表現したけれど、周りの人に受け入れてもらえなかったり軽くあしらわれたり、無視されたり批判されたりして(例えば、「そういうふうに思わない方がいいよ」、とか「忘れちゃえ」とか)うまく処理できずに飲み込んでしまった人はとても多い。

 自分で受け入れる事ができない感情を受け入れられるようになるためには、まずはその感情を信頼できる他者に受け入れてもらう必要がある。このプロセスは、健全な親子関係と関連性が深いものだ。表現して、他者に受け入れてもらえた感情は、もはやその人にとって脅威ではない。

 こうした感情の共有は親密なもので、こうした繰り返されるプロセスを通して、人は自分自身との繋がりを、また、他者との繋がりを取り戻し、癒されて、回復し、成長していく。


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