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ヴォーリズ設計による建築物は日本全国に残存していますが、その中でもその才能の片鱗を僕のような素人でも垣間見ることができる作品があります。それがヴォーリズゆかりの地に建つツッカーハウスです。近江療養院本館というのが本来の名称だそうです。建てられたのは1918年(大正7年)で、ヴォーリズ記念病院として利用されたわけですが、現在は使用されず保存状態もよくありません。反対運動もあり解体と保存で揺れている建造物です。元々はサナトリウム(結核療養院)として開業したもので、周辺にはいくつか病院施設が建っていました。その一つが礼拝堂です。いつ取り壊しが始まるかわからないので早めに行った方がい良いということで出かけてみました。行ってみて驚いたのはここでは近代的な病棟が建ち並び、ケアハウスなどの施設を含め総合医療介護拠点となっていることです。その中にツッカーハウスは残されていていました。ツッカーハウスの敷地内は立ち入り禁止で遠巻きに眺めるしかできません。ガラスは破損してるし、壁も落ちかけているし、クモの巣もいっぱい張ってる状態なので、まるであばら屋でした。しかも、僕が立ち寄ったこの日、大勢の作業者が館内に出入りして中にある家財などを外に運び出しているではありませんか。解体作業が始まったのでしょうか。それとも清掃して傷みのあるところを補修するのでしょうか。とにかく進展があることが確認できました。保存活動をしている人達なんでしょう。中央に出入り口があり、両脇にドームらしいものがあるので東京駅舎のようでもあります。どことなく南欧風の面影も感じます。ツッカーの名は資金提供したツッカー女史に由来があります。ですが、この建築デザインには大きな意味があることを知りました。当時、不治の病と怖れられた結核患者を治療するために、患者が効果的に日光消毒できるようにガラスを多用して日差しを入りやすくするだけでなく、立地条件や建物の向きも計算され、冬至の日が短い時期にも最大限の太陽光を得られるように設計されている病棟なのです。ヴォーリズの並々ならない設計思想が今に伝えられていると僕は思いました。だからこの地に病院と介護施設が運営されているに違いありません。ヴォーリズという人はデザイナーだとばかり思っていましたが、宣教師的な力を持った人物だったのかも知れません。教会も数多く設計していますが、彼が単なるキリシタンであったなら、これほど多くの人の心をつかむことはなかったと思います。
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本来の彼の仕事はなんだったんでしょうね。
日本を愛し、才能をあらゆるところに発揮した彼はすごいよね。