名古屋市天白区にある相生山は、手付かずのまま取り残された山です。取り残されるとは言い方が適切ではないかも知れません。そもそも山に手を付けなければならない道理などあるはずがないからです。その道理とは道路を建設することなのですから皮肉なものです。まったくの野生のヒメボタルの群生が政令市令都市の中で観られるのは奇跡と言う他ありません。徒歩で行ける最寄り駅が地下鉄の駅ですからね。今年は、気温が低いので出始めが遅かったみたいで本来ならトップシーズンのはずですが、おそらく来週か再来週になりそうです。今年は、初めてヒメボタルを観たいという方々を案内することになり、自然を守る会の近藤さんにガイド役をお願いしました。少し肌寒くて半袖で来たのは間違いでした。ヒメボタルは、深夜になって光りを強めるホタルです。そのことはヒメボタルを保護する上で不利です。夏の暖かい時期に日没後に光るゲンジやヘイケは、自治会が出店と提灯を並べ、チラシを配って花火を打ち上げれば、家族連れを呼び込むことができるので一儲けすることが可能です。幼虫を養殖して川に放流することだってできるので、潮干狩りのように人の手で造ることだって簡単です。照明無しで坂を登らないと観賞できないヒメボタルは得する人がいません。投資もリターンも期待できないのです。知る人が少ないのは良かったのか悪かったのか。今年、市長の河村たかし氏が判断する予定になっているそうです。道路工事予定地は、ヒメボタルの生息地のど真ん中なので、ひょっとすると今年が開発の影響を受けない最後の年になるかも知れません。相生山は、敷地が広いのですがヒメボタルの出現する場所は多数あります。穴場もあるのですがそれは秘密。山の高い方から日を追うごとに徐々に谷へ下がる傾向があるようです。今は梅畑がスポットです。人も多く来ていました。プロなのかアマなのか分からないカメラマンも結構来ていました。シャッターチャンスも少ないし、僕の持っている機材の機動力も大したことないので撮れる写真も限界があります。特にピントは苦労しますね。補助光を発するのは厳禁なので手探りで合わせるしかありませんでした。この写真がやっとです。ヒメボタルは無言で輝いていました。真っ暗な闇の中で観る光りはとても力強く感じました。ずっと昔から、いつからなのか分からないくらい過去から、自らの生命の掟に従って、ヒメボタルはお互いを確認するようにシンクロナイズして光るのです。

