なかなかどうしてやるじゃないか、山田孝之よ。2時間を超える長尺、現代を直視するテーマ、暗ささえこの作品の魅力にしてしまう集中力。俳優陣の精緻な演技。安定した脚本。全体を支える藤井道人の演出力。お見それいたしました。
ただ、犯罪が善意の基礎に立脚しているというのは冒頭から少々引きかけたが、まあ、きちんと落とし前をつけました。うまい脚本だ。
現代における善と悪だなんて、誰もが目を背けるテーマをきちんと真っすぐ直視しているのをまず褒めたいですね。「社会なんて、そんなものよ」、と思っている国民がほとんどの日本で、ちょっと待ってくれと言わんばかりに立ちはだかるこの無謀な製作者たちの主張は素直に感動する。
ラスト、悪と善との決闘は、悪しき人も良き人も日本という湿地帯の泥の中で、まさしく泥試合を演ずる。感覚的にも秀逸なシーンであった。
ただ、ああいう最後であれば、取り残された子供たちはどうなるのだろう。正義が彼の言うところの「守ってあげる」ことだとすれば、彼の行為は正義なんてものではなかったはずだ。かと言って、悪でもないのだが、、。
俳優では田中哲司が抑制の利いたさすがの演技。あの格闘シーンでのセリフの見事なことよ。安藤政信は演技のし甲斐のあるいい役。まだ、青年の面影を残している。いい役者だ。 清原果耶は一番難しい役どころ。うまくこなす。
小西真奈美さんはもう声を聴くだけで僕ははっとする。そしていつまでも美しい。佐津川愛美は友情出演並み。でも彼女が出演してて華やか。あ、そうそう、阿部進之介は初めての主役か。手垢ついてず新鮮。
作品的にいろいろ考えさせられますね。秀作です。
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