冒頭の5、6分。下から見上げた木々の枝からの空が延々と続く。長い。少々苛ついてしまう。この経験は前も経験したかな。えっと、そうだ。ゴダールの「ウィークエンド」だ。長らく渋滞する道路、車は全く進まない、延々とその様子を観客に同時体験させる。そしてやっと動き始めたら、なんと衝突事故の悲惨さが、、。
この映画の方は、延々と続く空の後は何ともない普通のカットが挿入されていた。テーマは自然と人間。大きいテーマである。そうですね。濱口ほど毎回テーマを変える映画作家も珍しい。なるほど今回は自然か。今までの人間対人間から大きく180度視点を変えた。あるいは、広がりか、、。
日本でも自然林がかなり残るある長野の山奥に、助成金目当ての芸能事務所がリゾート施設を作らんと村を蹂躙しようとする。その対立する関係説明会が生々しく、こちらも長く続き、正直閉口する。しつこい。現代の汚点、汚辱を延々と見せる。ここで、巧は「俺は中立だ」とのたまう。何か、いやな前触れを感じる部分だ。
巧は感情を一切封じ込み、自分が一番真摯に自然と対峙していると思っている。けれど、一方、一番溺愛している愛娘に自然との向き合い方を伝えているようで、そうでもなかった、、。
自然は人間が思っているほど御ししやすいものではないのだ。自然の中では人間はほんの小さな自然体の一部に過ぎない。ラストの悲劇は我々人間に大きな俯角から投げかけられたいわば神の摂理のようなものを感じる。怖いラストである。
何か、水をぶっかけられた感覚で映画館を出る。濱口はこの感覚をわざと観客にぶつけたのだろう。なかなかのふてぶてしい映画作家である。
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