僕らが西川を女性監督だという意識を持ち過ぎなのかな、見ている僕らはやはりどこかでこの作品に女性の意図を感じてしまうのだ。
男でも女でも別個の人格をもった人間を支配することなんてことは本来出来ないのである。でもこの映画の女は、ふたり共通の目的を持って生活して来、それが壊れ、そしてそれに夫の浮気が伴ったとき、(カネあり)女に、ある意味復讐するために夫をツールとして使い結婚詐欺を企む。男は妻の企みにそのうち気づいていくのだが、逃げ出そうとして、、。というアブナイ話だ。
ただただ結婚さえ出来ない女と言われのがいやで詐欺にはまるOL、女扱いされない重量級アスリート、ブスで客によくチェンジされる古いタイプのマントル嬢、子連れのバツイチ公務員女、被害者はすべて類型的だがいい女性たちであり、男は付きあって行くうちに自分を取り戻していくことになる。
しかし当然、夫婦関係も歪なものになって行き、セックスレス状態になった時、女は仕方なく自慰までする始末。生理パンツを大胆に穿いたりするシーンもあり、これは西川ならではのサービスか。でも、面白い。松たか子だからやはりドッキリする。
そりゃあ、もう破滅しかないわなあと思っていたら、何と巻き上げた金で新しい店舗を準備するシーンが出現。これだけ派手に犯罪行為をやっていて、しかも結婚詐欺で場所を移動しない詐欺者が捕まらないはずがない。何と、のんきな女であることよ、と作品構成上、この新店部分が私には少々解せません。
でも女の意図とは冒頭で書きましたが、西川は被害者の女性4人の描写は全く類型的であります。ほとんど情感が感じられません。ただ松と阿部は完全に倒錯していることもあり、男願望が強いのかもしれません。そういう意味では女目線です。支配欲の強い女目線です。松の役どころはちょっとしたモンスターですもんね。
2時間強、だれることなくさすが面白い作品となっています。次作も期待できそうです。
セントさんに改名されたんですね。
ヌートリアEを慣れ親しんでおりましたので、ちょっと寂しいです。
本数が限られている私としては多いに頼りにしている方ですのでセントさんとして今後もよろしくお願いいたします。
西川美和さんて、僕が盲目的に好きになった監督さんで、この作品も納得できました。
「監督の名前は知らないけど、この映画は知っているという作品を撮りたい」とおっしゃていたのを聞いたことがあるのですが、この作品はまぎれもなく西川作品だったと思っています。
「夢売るふたり」のタイトルも納得です。
凡人の私なら「夢見るふたり」にしていたかもしれません。
冒頭からの4,5分の映像の情景はさすが西川作品らしく、しっかりと骨太に描かれており、そこらの作品とは一線を画しておりました。
女がモンスターを描くと男よりえげつなくなるのかもしれません。でも、同じモンスターでも「ダークナイト」のジョーカーほどのすごさはなく、そういう意味ではやはり女性でよかった、と、、。
松は「告白」に続くこの作品、イメージが固定するのかもしれず次作が楽しみです。
それでは。