お気に入りのホン・サンスの新作だ。何気なくただ映像だけを見ていると、普通の、夫の出張中に3人の友人を訪ねるロードムービーになってしまう。何か不思議な映画だけどこれがベルリンの監督賞?と思ってしまう人もいるに違いない。
けれど僕はたんとサンスの映画を見てきた。この何気ない会話劇に仕組まれたサンスの思惑とは何か!それはミステリー的であります。
第1話。男性にも見える女性と同居している先輩。女友達は離婚して今や郊外に住み、好き勝手に生活している。夫といる間は1分でも厭で仕方なかったが、今は自由を満喫していると言う。そして、隣人の男から猫のクレームが来る。両方折れない。
この隣人は後ろ向きだ。顔は見えない。同居の女性も肉を焼いている間は後ろ姿。僕は男かな、と思った。この映画では女だけが顔を見せる。
とこういう風にガミが3人の女を訪ねていく。なぜ彼女は大した用事もないのにわざわざ旅をするのか?夫とは5年間、一日たりとも離れたことがなかった言う。それを3人に言うものだから、これはてっきり虚言だと即思う。
2人目の女友達は一回だけ男と関係を持ったら、執拗に男から追いかけられ困っている。その男も後ろ姿のみで出現する。
3人目の女友達と会うときには、その夫との関係もありそうである。まさにその男と会うために女友達を訪ねたようでもある。この夫も後ろ姿しか見せない。
そう、この映画では男はみんな後ろ姿ばかり。登場人物からは見えているのに、観客からは見えなくしている。これはなにを意味するのか?
男不在と言えるが、そこにはガミの男への虚無感が介在している。ラストは小さな映画館で見る映像で終わる。それは海だ。波立った海がクールベの絵のようだ。恐らくガミは人生に倦怠感を持っている。何かから逃げようとしている、、。まだ逃げてはいない。
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