原作は教科書にも載っているという題材らしい。昔日本映画に「母もの」というジャンルがあった。貧乏が大部分を占めていた時代の家族の絆を描いたものである。現代はその時代に近づいているというのだろうか、、。
反戦映画である。けれども、例えば新藤の「一枚のハガキ」のような人間の存在、政治、権力を厳しく見つめた映画ではない。母親の産んだ7人の息子が次々と徴兵され、そして死んでゆく。世の中は当時の思想教育で国民全員を洗脳しようとしていた。
戦いに行く(死にゆく)息子をおめでとうと送り出し、死んで帰ってきた息子を泣くこともかなわず、英霊という名で、これもおめでとうと言わせる戦前教育。母親からすればなんでこういうことが起こるのか、と大声を出したい気持ちだろう。けれど国民は耐え忍ぶ。思想教育とは恐ろしい。
セリフではそんなことは出ては来ない。けれど、母親の感情は観客に、しかと伝わってくる。それは論理的ではなく、ただ一人の女性の女性の悲劇を通して、日本国民全体の悲劇を導いている。戦争はいけないことなのだ。どんな理由でさえ絶対避けなければならないことなのだ。
現代日本ももちろん安全なわけではない。この映画が何十年の年月を超え現代日本にさ迷い出てきたのにはひょっとして理由があるのではないか。実はそんな問題作なのではないか。
映画はただただある一人の女性を通して、ある母親が子供の墓碑銘として植えた7本の木を通して、戦争のむごさを現代に訴える。我々は顔を背けてはならぬ。今何が起こっているのか常に知るべきだ。
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