恐ろしく美しくそして耽溺的なモノクロ映画である。時代は現代らしいのであるがどう考えても4,50年以上前にさかのぼる回帰映画でさえある。テーマはただ一つ「愛とは何か」。それだけで十分「非現代」でもある。
【ローラ・スメット】が実に色っぽい。恐いぐらいに女っぽい。あまりの映像の美しさに見とれていると、映画はモノクロの方がリアルを隠すことに向いているのではないかとさえ思えてしまうほどである。色彩のある映像の方が実に現実的なのである。
背面で強く不安げに鳴り響くヴァイオリンの演奏。映像と音楽と古めかしい時代設定のトライアングルに完全に観客はこれは作りものだなあと気づく。虚構の世界である。映画では携帯電話もなく(手紙がツールとして使用される)もちろんパソコンもなく、新しい車もない。そこにあるのは僕でさえ忘れているレトロなモノクロの世界だ。
物語は単純である。人を愛することの純粋さとその持続性を問う。男と女はずっと相手を所有できるものなのか。映像は女の狂気を見せながらも愛の強さを執拗に綴っていく。男の中に残滓となって潜む女への愛は強く本物の愛となり男は成就する。
いかにも古めかしい物語である。けれど強い愛である。現代では到底見つけられないシンプルな愛である。だからこそ【ガレル】はモノクロで撮ったのであろう。映画史に残るほど美しいこの映像は後々にまで語り継がれるほどだ。
愛は強く、ときには狂気を伴うが、けれど本物の愛は永遠だ、だなんて、、。少々恥ずかしい。デジタル全盛である現代であるがゆえに希有な映画ではあるが、映画好き冥利に尽きる映画でもあるのは事実。ファンは一見あれ。
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