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瞳は静かに (2009/アルゼンチン)(ダニエル・ブスタマンテ) 70点

2012-01-13 13:40:16 | 映画遍歴

アルゼンチンの軍事国家時代の暗黒を子供の目から見捉えた作品です。子供の視点だからどこか曖昧で、何が何やら明確には説明しないところがこの映画の特徴であるのだが、でもそのためか主題も拡散されてしまった感もする。

母親が何やら非合法組織に入り込んでいる様子は窺えるも、家に入り浸る男が情夫としての存在するのかどうかは不明確。子供の目だから当然と言えば当然だが、かといって子供がそれほど嫌悪感も持っていない様子は不思議。

それより、母親が急死した後、何やら身内がそわそわして身の回りのものをすべて焼却しようとすることに息子がショックを受けていくのは分かるような気がする。そのため、父親、祖母に憎しみを持ってしまうのは理解できるが、それでも祖母に対してのあの子供のオーバー演技は僕に違和感を覚える不快感となって残る。

大人たちは政治活動に邁進する人たち、活動を理解できても目の前の生活維持のために口を閉ざす人たち、この二律背反が成立するのは世の必定なのだ。日本だって戦前の特高時代には同様の政治状態も存在した。アカと言われて投獄された自由人・一般人は何十万人もいたことだろう。

人間が生きていくにはいろんな処世術があるのだ。子供の目を通してその時代の汚点をただ描写したスケッチのような映画であれば僕は何も言わないが、この作品は肉親たちの日和見行動を良しとしない何かが窺える。そこが僕には気になるところである。あのラストは不快感が今でも僕には残滓となって残っている。

どんな時代も生きていくために最善の努力をした人たちが存在し、そして今の時代があるのだと僕は思うのだ。


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