パッチギ！ ＬＯＶＥ＆ＰＥＡＣＥ (2007/日)(井筒和幸) 70点

この作品については前作との創作上の視点がまったく変質していることをまず挙げなければならないと思う。
前作は日本人から見た在日への視点が主眼であった。だが、本作ではまったく逆で、在日から見た日本人が基本であり、メッセージ色が強くなっている。。あまりに露骨に思ったのか、藤井隆を配してそれを多少薄めてはいるが、奔出している井筒の憤りはとどまるところを知らない。
そのため、観客がほとんど日本人であるがゆえに、自虐的な、複雑な想いで映像を見続けることを強いられている。
演出は思ったより練られており、予告編で感じられたダサさはほとんどない。しかし、僕はこの井筒の視線がどうも最後まで窮屈で、感動すべきところで涙ひとつ出ないのである。底が正直困りました。
俳優陣はハングル語を交えてしゃべり、熱演、しかも豪華だ。井筒の人間性だろうなあ。
主役の二人はのびのびと演技しており、十分この映画のテーマを表出できたと思う。
映画的には、メッセージ色が強くなることにより、前作に感じられた叙情性がまったくなくなっており、かなり薄っぺらいものになったと思うが、井筒の熱意だけはラストまで強く貫かれている。正直感心しましたよ。その熱気に加点します。