空の驛舎、名前は知っていたが、初めて観る。20回の公演だというから、かなり歴史のある劇団なんでしょう。期待して観る。なるほど、さすがというべきか、現代人の繊細で迷う心の奥脳を夢に託して掘り下げている。
『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』。
有名なゴーギャンの絵の題名である。この演劇のテーマでもある。絵そのものよりも、ずっとこの題名に昔から興味深く思っていた。宇宙の起源のことを言っているようであり、それはすなわち我々の起源と死を思い起こさせるものでもある。
独り、孤独に生きている女性は(同棲している男はいても)夢と現実への垣根が見つからず、生きていることの不安を感じながらその日をただ過ごしている。
この女性がうつ病だからというのではなく、こういう根源的な悩みは人間本来の持って生まれた、それこそ仕方のない不文律なのであろう。言葉には出さないものの、みな多かれ少なかれ考えていることなのである。
この公演では、神も出てくれば、裏切ってしまった友人たちも黄泉の世界から現れる。人が人でなくなったどろどろの状態、すなわち人もどきも出てくる。すなわちそれは夜である。夜は生きているもの、死んでいるものたちが自由に徘徊できる場所でもあるらしい、、。
同棲している男の妻が現れる。女を罵倒する。娘がいて、知恵遅れであるという。男はすなわち家族を捨てている。世間では、こんな男をひどいというのだろうなあ、とふと思う。それが世の中というものである。そんな世界に僕はどっぷり浸かっている。
ウイングフィールドの背もたれのない椅子で腰痛気味のだるさを感じながらも、90分を過ぎると、なぜか感動の涙がすうーと落ちてゆく。それは優しい涙だ。生者も死者をも全面的に許せる愛のシャワーである。何か、不思議だが、一瞬、救済された至福感さえ感じた。
秀作である。
このように作品について触れていただけることもまたありがたく思います。
劇団のTwitterでこちらを紹介させていただいてもよろしいですか?
そう言えばそうですね。
劇は完成度が高く驚きました。また見に行かせていただきます。
劇団Twitterの件は全然問題ないです。よろしくお願いします。
それでは、また。