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パンドラの匣 (2009/日)(冨永昌敬) 75点

2009-10-22 14:48:46 | 映画遍歴
敗戦直後のサナトリウム(古い言葉だ)。当時は薬もそれほどないのだろう、映像で見るように体力のみで治療していたような雰囲気だ。恐らく資産家でないとこういう療養所には入れなかったのだろう。優雅な療養生活である。

変に明るいのだ。でもそれは野外の日光の明るさではなく、患者たちから眺めた脳裏の明るさというか、だからそれはあくまでも抽象的な観念を伴ったものなのである。だから、映像ではまるで楽しい学園生活っぽい描写の中に突然喀血して死にゆく若者も描かれる。

恐らく喀血して自然治癒する青年は当時それほどいなかったのではないか、と思われる。だからこそ、このサナトリウムで生活する青年たちはいずれ死にゆくことを身に沁みて考える青年たちなのである。だからこそ明るさが必要なのである。

太宰治は「右大臣実朝」で言っている。「アカルサハ、ホロビノ姿デアロウカ」。

僕は高校生時代に読んだこの言葉が今でも脳裏を駆け巡る。まさにこの映画の明るさは「ホロビノ姿」でもあるのだ。すなわち太宰の姿でもある。まさに太宰が現代によみがえったような映像。素晴らしい。好きです。僕を高校生時代に戻らせてくれました。

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