そんなに賞を取っている映画だなんて知らず、相変わらず何の先入観もないまま鑑賞した。陰惨な殺人事件をベースにしているが、どこか全編に渡り抒情的なんだよね。そこがこの映画の魅力だと思う。
先鋭ではないが何か変わっている映像カット群。ミステリーの雰囲気をどんより漂わせ筋を読ませる前半部分の展開。何より得体のしれない男と女のほつれあい。熊のような刑事と美人過ぎる被疑者との官能的表現がたまらん。
特に野外スケート場から徐々に二人が外れ、カメラが追いかける夜の移動シーンはなかなか新鮮であった。何と言っても男と女のきれいごとのない駆け引きがいい。
どう避けてもあがらっても、男が追いすがるかのような魔性の女グイ・ルンメイの美貌はこの映画のカラーに強い印象を残す。若い時から見ているが、ルンメイ、陰影のあるいい女優になった。彼女を見ているだけでこの映画は退屈しない。
猟奇的ミステリーが解決篇に向かっていけば、通常の一編の映画に成り果てる構造ではあるが、イーナンはラスト、それを断ち切るかのように、思い切って白昼の花火を中国の田舎町の暗い空・街中に鳴り響かせる。でもそんなラストシーンで、現代の抱える中国の矛盾が表現出来得るのかどうか、まだまだ若いなあと思う。
かなり映画を見ている僕からするとこの手法はとても幼稚だと思えたが、こういう映画の見方はよろしくないのだろう。少なくとも30年前に見ていたら少しは僕も映画的高揚を覚えていたかもしれない、、。
嗚呼。年は取りたくない。
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