たまにコンサートには行く。CDではカルテットが好きだが、生ではやはりシンフォニーがいいと思っている。集合体としての音も、各個人の楽器の音も、さらにシンフォニーは楽器を奏でる奏者の仕種を見るにつけてビジュアル的に実に面白い。
そして本作はカルテットの話である。25年続いているそれぞれの人間ドラマである。リーダーたる存在のチェリストが病気を発病し引退しようとするところからドラマは始まる。
4人最後の演奏曲はべートーベンの第14番である。この曲はアタッカ(途中中断がない)でしかも7楽章からなる難曲である。それなのに、最初からリーダーの体調不良を契機とした4人の不協和音が奏で始まる。
今まで25年我慢していた鬱積が3人に台風のごとく巻き起こる。まさに人生を四重奏に見立てたこの設定は見事の一言である。アッタカだからそれは弦の調子がおかしくともそのまま続行しなければならない。弾いている間に各自調整を図っていくことを求められるのだ。
映画のほうも、第二バイオリンと第一バイオリンとのパートをめぐる確執。それに過去の恋愛話が交錯しドロドロ状態になる。それに追い打ちをかけるかのように夫婦の娘と第一バイオリニストとの間の恋愛。
まあ、実際こんなことは起こらないだろうと観客は思うけれどそこは映画。なかなか辛辣で激しい人生模様を見せつけてくれる。
そして人生にも嵐の後には落ち着いた風が吹くものだ。あれほど暗譜を嫌がっていた第一バイオリニストも他の演奏者も全員が初めて暗譜の7楽章に挑もうとする。しかし、思わぬ事態が、、。いやあ、スリリングで面白かった。感動的でさえある。
ただ音楽を聴いていればいいいわゆる通常の音楽映画ではなかったです。鳴り響く人生の四重奏。それは4人で一つの人生であり、またそれぞれが生きていくための人生でもあったのですね。
これぞ秀作。
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