昔懐かしきスタンダード画面。モノクロ。けれど構図がびしっと決まっていてすこぶる美しい。淡々としたしかしシャープな演出に、そしてそのテーマにめずらしく戸惑う。人間の愚かさ、悲哀、生と死、そして希望、、。
ポーランドで終戦後、共産主義運動と共にユダヤ人狩りが行われていたようなことも知らず、自分自身の知識のなさと冷酷な歴史の事実の前にがく然とする。
イーダは18歳になる。修道女になる儀式の寸前に唯一の血縁の叔母がいることを知り、訪ねていく。
そして叔母から自分はユダヤ人で両親はポーランド人に虐殺されたことを知る。その緊張感。5秒で自分の出自を知るその瞬間。その時たまたま妹に預けていた叔母の息子も殺され、イーダは女だからかろうじて助け出されるのだ。
重いなあ。人間って、なんでこういうことを平気でやってのけるのだろうか。神とは何なんだろうか。脳裏を何かしらうごめくものが駆け巡る。
やはり真実を知るということは必要なのだろう。イーダはすべてを知った後でもまた教会へ戻ってゆく(ラビではない)。モノクロの美しい映像に満たされ、イーダを通して、それでも人は生きて行くということを教えられる。そこからはかすかな希望さえ感じ取れる。
痛烈な秀作である。
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