J・ムーアの演技だけを見る映画ではない。どこの誰をも他人事と思えないアルツハイマーについて、じっくりとこの際考える映画なのである。
アルツが家族病なる遺伝的のものは進行が速いということ初めて知る。不幸にしてアリスは50歳にしてそれを発症してしまう。病気だから原因はあるはずで、原因究明できれば治療は出来るはずと最初考える。しかしALSしかり、現代においても治療不可能な難病は数多く存在する。
若年性アルツは確かに気の毒だ。しかしアリスは癌のほうがよほどましだと言う。少しアリスとは違うが、僕も癌のほうがアルツよりいいと思う。何故ならがんなら死ぬまでの時間を自分で意識しながら生きてゆける。
しかし、アルツは症状が進行すると自分(意識)そのものが存在していない。(もちろん肉体はあれど)それが怖いのだ。(そうなったときにもう自分は痴呆で分からないからいいのではないか、という人もいるが、分からないから僕は嫌なのである。)
この映画の面白いところは、例の初期の病状の時にビデオで自死を仕込んでいるところだろう。これはハッとした。タイミングが合わなかったんだね。ちょっと進行が進んでいたんだ。いやあ、怖いシーンだった。この作品の白眉でしょう。
あと怖いのは想像通り、誰がアリスを介護するか家族会議をするシーンである。いやあ、いずこも同じ秋の夕暮じゃのう。また、あれほど愛し合っている夫婦でさえ仕事を理由に妻から離れようとする夫。すぐそのことに嗅ぎつくアリス。
現実感が出すぎてすごいです。
最後は結局一番自由な末娘の世話になるアリス。アリスの症状によって映像の色彩も変わっていくところもかなり秀逸な映画であります。現代における家族残酷物語であります。
映像を見つめているときも、映画館を出ても、余韻がずっと残ってしまう映画でもあります。考えさせられる映画なのです。考えないといけない映画なのです。
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