4時間の演劇というのは初めての経験。場所も通常の演劇場ではないことも分かっていたので、自分の体が持つかどうかまず心配であった。
そして、大阪の猛暑の中、まず場所探しにエネルギーを使う。何回もそのビルの前を行きつ戻りつ、やっと見つけたのは始まる15分前。劇場内に入ると結構みんな席に着いていた。
演劇スペースがものすごく狭くどうやって演じるんだろうなあと興味深々。お目当てはいつも演劇集団からくりで常に出演されている牛丸裕司さんである。
だいたいひょうきんな役が多いが、この役は(映画では知ってはいるが)なかなかの難役である。しかもいつもの人情ものではなく、政治情勢と男と男(女?)の愛というシリアスものなのだ。
演劇が始まってみると牢獄のカーテンが観客の目の前に仕切られている。たまに二人の囚人の風態は見え隠れするがほとんど声しか聞こえない。というか、姿が見えない。これで4時間。初めての経験で動揺する。
けれど姿は見えなくても声だけで演劇を見るということが可能だとそのうち思い始めて来る。二人とも囚人服を着ているが一人は完全にオネエ声の男。もう一方は政治犯の男だ。オネエ声は官憲に協力しながらも、次第にその男を愛するようになって来る。そして今一人の男も、、。
途中10分ほどの休憩はあったものの舞台はどんどん進んでくる。
僕もそのうち声だけの演劇に慣れて来る。劇は愛が募って来てこのブログでは言えないシーンとなってくる。音声だけだからこの愛の成就が描けるんだと仕切りのカーテンの意味を知る。(恐らく舞台範囲が狭過ぎて仕方なしの設定だったとは思うが)、音声だけで4時間という劇。これはスゴイことだと思う。完成度も高い。
牛丸さんの声が透明感のあるいい声だとは前から分かっていた。だから二人の会話は後半になってくると完全に一編の詩であった。素晴らしい愛の劇であった。4時間は決して長くはないと感じられる程の秀作であった。
5人の役者に(いや多くのスタッフにも)拍手を送りたい。あの膨大なセリフ。覚えようとするだけで本来は身のすくむ思いではなかったのか。スゴイ。
ラストは二人の哀しい愛とその成就にほろりと涙が出ました。夏の昼の清浄感あふれるいい時間でした。
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