1988年の6月から7月にかけて、セシル・テイラーはベルリンに滞在し、多くのライヴをこなしている。そのときの記録が、FMPレーベルから出ている10枚組CD『Cecil Taylor in Berlin '88』である(>> リンク)。これが世に出たころ、ディスクユニオンの壁に飾られているのを見ては、ああ欲しいなあ、高いなあ、などと思い続けていた。そのうちに姿を消してしまい、結局手元にあるのは、バラで購入した2枚のみだ。実はまだ欲しい。
■ セシル・テイラー+トリスタン・ホンジンガー+エヴァン・パーカー『The Hearth』
Cecil Taylor (p)
Tristan Honsinger (cello)
Evan Parker (ts)
約1時間のインプロヴィゼーション一本勝負。テイラーの煌めくピアノの中を、ではなく、テイラーのピアノ、ホンジンガーのチェロ、パーカーのテナーサックスの三者が押したり引いたり、絡んだり離れたりして、実にカラフルで有機的な音空間を形成する。パーカーの唯一無二のサックスはもとより、ホンジンガーの精力的なアルコも様子を見るようなピチカートも素晴らしい。
■ セシル・テイラー+デレク・ベイリー『Pleistozaen mit Wasser』
Cecil Taylor (p)
Derek Bailey (g)
30分前後の2セッションから成る。第一セッションでは、ベイリーのアコースティック・ギターが響く中、おそらくはダンスしたり、詩を詠んだり、ピアノの弦を弾いているのだろう、テイラーの動く様子が伝わってくる。こればかりは実際のパフォーマンスを観てみたいところだ。映像は残されていないのだろうか?
そして第二セッションでは、遂に椅子に座ったテイラーと、エレキギターを弾くベイリーとが最強のインタラクションを見せる。それにしても、ベイリーの音色の多彩さには改めて驚かされる。ギターソロ演奏とはまるで異なるのだ。生前に一度も生の演奏に接することができなかったのは残念でしかたがない。最後のチャンスは新宿ピットインでのライヴで、大友良英とのデュオ、吉沢元治とのデュオの2日分を予約して期待していたのだが、本人の体調不良で来日中止となってしまったのだった。
今月には久しぶりにセシル・テイラーが来日する。前回はいろいろあって観に行かなかったので、わたしにとっては、2004年にベルギーのアントワープにおいて、トニー・オクスレーとのデュオを観て以来7、8年ぶりだ。そのときも終電でブリュッセルまで戻らなければならず、演奏を最後まで見届けることができなかった。ひたすら楽しみである。
セシル・テイラーとトニー・オクスレー、アントワープ(2004年) Leica M3, Summitar 50mm/f2.0, スペリア1600
●参照
○ドミニク・デュヴァル+セシル・テイラー『The Last Dance』、ドミニク・デュヴァル+ジミー・ハルペリン『Monk Dreams』
○セシル・テイラー『Dark to Themselves』、『Aの第2幕』
○セシル・テイラーのブラックセイントとソウルノートの5枚組ボックスセット
○イマジン・ザ・サウンド(セシル・テイラーの映像)
○「KAIBUTSU LIVEs!」をエルマリート90mmで撮る(2007年)(ホンジンガー登場)
○「KAIBUTSU LIVEs!」をエルマリート90mmで撮る(2)(2010年)(ホンジンガー登場)
○ICPオーケストラ(2006年、ホンジンガー登場)
○ネッド・ローゼンバーグの音って無機質だよな(エヴァン・パーカーとのデュオ)
○ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(エヴァン・パーカーとのデュオ)
○アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『ライヴ・イン・ベルリン』(エヴァン・パーカー参加)
○シュリッペンバッハ・トリオの新作、『黄金はあなたが見つけるところだ』(エヴァン・パーカー参加)
○ウィレム・ブロイカーが亡くなったので、デレク・ベイリー『Playing for Friends on 5th Street』を観る
○デレク・ベイリーvs.サンプリング音源
○田中泯+デレク・ベイリー『Mountain Stage』
○トニー・ウィリアムス+デレク・ベイリー+ビル・ラズウェル『アルカーナ』
○デレク・ベイリー『Standards』