今晩、キース・ティペットのソロピアノを聴きに行く。何しろ1997年以来である。
1997年。法政大学でのパフォーマンスは素晴らしく、観客は皆興奮してアンコールの拍手を繰り返した。いちどは応えて短いソロを弾いたティペットだったが、二度目には、「ありがとう。しかしわたしはこのように老いた男だ」と誠実に言って、挨拶だけにとどめた。
しかし、そのとき、まだ50歳なのだった。いまは65歳。新宿ピットインで、どのような演奏を見せてくれるのか、楽しみである。
そんなわけで、期待しながら、手持ちのソロピアノを棚から出して聴く。
『Une Croix Dans L'Ocean』(Victo、1994年)は、非常に内省的なソロである。静かに、音と音との間をとり、考えながら即興を繰り出してくる。勿論、そのまま眠くなるようなソロではない。46分、休みはない。
『Friday the 13th』(NRL、1997年)は、その初来日時の仙台における記録である。法政大学より前だったか後だったか覚えていない。ここでは、打って変わって激しい轟音のようなソロを見せる。やはり1本勝負。
『Mujician I』(FMP、1981年)と『Mujician II』(FMP、1986年)との2 in 1盤は少し遡るが、10-20分の演奏それぞれがバラエティに富んだ大傑作だと思う(C.W.ニコル氏が、ティペットの音楽のことを「音楽曼荼羅」だと表現しており、言い得て妙である)。特に冒頭曲の「All Time, All Time」の迫力たるや凄まじいものがあり、絶え間ない低音の基調をベースに、その表情が次第に変っていく過程が素晴らしい。
今日はどのような演奏だろう。やはりプリペアドなのだろうか。