新宿ピットインで、キース・ティペットのソロピアノを聴く。
定刻の20時きっかりに開始した。最初は、抑えめの抒情的なブルース。やがて、得意の低音の繰り返しを基調とした盛り上がりがあったり、まるで童歌のようなメロディーがあったり。
やはり、トレードマークのようなプリペアド・ピアノが効果的で、木のブロックや、でんでん太鼓のようなものや、オルゴールといったものを、弦の上に置き、すばやく移動させていた。ヒンドゥー寺院や曼荼羅が空間の埋め尽くしなのだとすれば、このプリパレーションによるノイズは、時間と意識の埋め尽くしのように思えた。
たいへんな緊張感が続き、きっかり1時間ののち、鍵盤を撫でるようにして演奏を終えた。そして、アンコールに応えて短い曲。素晴らしいパフォーマンスだった。
ツイードのジャケットをスタイリッシュに着こなし、観客とのコミュニケーションについて感謝のことばを述べるティペットは、やはり、英国紳士なのだった。声をかけてサインをいただくとき、1997年に観たことを云うと、「妻(ジュリー・ティペット)との共演か?」と訊かれた。いや、ソロだったのだが、別公演では一緒のステージだったのかどうか、まったく覚えていない。
演奏後、ティペットにサインをいただいた