亀井俊介『ニューヨーク』(岩波新書、2002年)を読む。
これで、ニューヨーク関連の新書を、懲りずに3冊目。ほとんどラノベ感覚だが、さすがに飽きた。しかし、同じような内容の入門書を続けて読むと、いやでも重要な事件や背景について刷り込まれるというメリットがある。
先住民の歴史を脇において、ヨーロッパからアメリカにわたってきたところから語りはじめると、他国と比べてどうしても歴史が短くなる。それでも、新書くらいのボリュームでは、通史は浅いものにならざるを得ない。本書も、ニューヨークの歴史や、市内各地域の特色についてうまくまとめてあるものの、具体的な話に踏み込まないため、あまり面白くはない。
ニューヨークは、田舎に紐付けられた田舎者が集まる東京と違い、根無し草が集まる都市であるという。そして、それでこそ、どんどん都市の表面が塗りかえられ、活気のある場になるのだとするのが、著者の主張である。しかし、東京がそうとばかりは言えないのではないか。わたしも田舎者ではあるが、いつも帰る場所としての田舎が心のなかにあるわけではない。大学生のころ、たまに帰省すると、もう東京に戻りたくてしかたがなくなり、いよいよ戻ってきたときに東京の夜景をみて、しみじみと嬉しい気持になったことは、一度や二度ではない。