初見かおり『ハレルヤ村の漁師たち』(左右社、2021年)を読む。
著者は内戦後期にスリランカ北部の村に滞在して文化人類学の調査を行っていて、その際にさまざまな人たちと接したときのことを書いたエッセイ。
スリランカはシンハラ人が7割を占めており、2割ほどのタミル人はさまざまな面で冷遇されていた。やはりというべきか、政府軍にもテロ組織の虎(LTTE)にも非人道的な行いがあったことが、住民たちの声からよくわかる。このような本の存在価値は、正史の情報では難しい実感を得ること、偏りを避けること。
僕がスリランカを旅したのは20世紀の終わりころで、内戦のために北部や東部には立ち入ることができなかった。1回目に列車の中で英語教師と知り合い、2回目には居候させてもらったのだけど、その家に帰省していた政府軍の友人が訪ねてきて、3人で一緒に酒を飲んだらもう戦争に戻りたくないと言って泣き始めたことがあった。元気に生きているかどうか。
Fuji X-E2、AR Topcor 55mmF1.7