心身ともに疲労困憊しているときの劇薬はセシル・テイラーであり、通勤時間に聴くとひたすらに高揚する。ここ数日間のそれは、ドミニク・デュヴァルとのデュオ2枚組、『The Last Dance』(Cadence、2003年録音)である。
セシル・テイラーのピアノはぎらぎらと煌めく結晶の集合体、それも自己増殖と滅却を繰り返す怪物のようであり、時にその音で涙腺が緩む。この長いコンサートでは、動悸動悸するほどにドラマチックな展開をみせる。その中で、ドミニク・デュヴァルのベースは、フレーズも、弦の張りも、ノリも、驚くほど柔軟なのである。テイラーという巨匠を前に、がっぷりと組みあうというより、結晶体の間隙を縫ってタップダンスのような軽やかな音を繰り出してくる。テイラーと共演したベーシスト、例えばウィリアム・パーカーやバリー・ガイといった剛の者に比べれば、デュヴァルは明らかに柔の者だ。これは快感である。
デュヴァルの盤で最近よく聴いているのが、ジミー・ハルペリンとのデュオによるセロニアス・モンク曲集、『Monk Dreams』(NoBusiness、2005年録音)である。実はハルペリンというテナーサックス奏者のプレイをこの録音で初めて聴いた。レニー・トリスターノやサル・モスカに支持し、ウォーン・マーシュに連なる系譜のプレイヤーのようで、それは、トリスターノやリー・コニッツのような組み立て方というよりも、マーシュのような音色に感じることができる。サブトーンが気持ち良い。
特に、2テイクが収録されている「Brilliant Corners」。モンクのオリジナル演奏はあまりにもモンク世界ゆえ敢えて言うこともないが、改めて、ヘンなコンポジションだ。ハルペリンのソロに続き、デュヴァルが入ってくるとビートに乗った演奏となる。この落差がたまらない。
ジャケットは最低