Sightsong

自縄自縛日記

オーソン・ウェルズ『オセロ』

2012-04-30 00:55:41 | ヨーロッパ

オーソン・ウェルズ『オセロ』(1952年)を観る。

何と、本屋の一角にある廉価盤DVDのなかにあった。500円だった。画質はそう誉められたものでもないが、この映画が辿った運命のことを思えば、何だか奇妙な感慨を抱かされる。

この作品は、カンヌ映画祭でグランプリを受賞しながら短い公開のみでその後上映されず、フィルムも行方不明となっていた。倉庫から発見され、米国で再上映されたのは1992年のことだ。そして日本での初上映は1993年。わたしは千石にあった三百人劇場(いまは既にない)でそれを観た。予想を上回る出来にすっかり感激してしまったことを覚えている。

原作は言うまでもない、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲である。オーソン・ウェルズは、おそらくはフィルタを多用したハイコントラストのモノクロ、目まぐるしいカット割り、エイゼンシュタインをも想起させる大袈裟一歩手前のモンタージュなどで、凄まじい『オセロ』を作っていた。改めて観ても、同様に魅せられてしまう。何といっても、キャロル・リード『第三の男』(1949年)へのオーソン自身の出演は、この映画の製作費を稼ぐためだったのであり、力作なのも当然か。

日本公開時に買ったパンフレットを探しだすと、新たな事実を発見した。とにかく資金不足、何年もかけて他の映画の合間にフッテージを撮りためた。そのような切れ切れの不統一な断片を映画として構築したからこそのダイナミックさでもあったのだ。やはりオーソンは天才である。


パンフの中からチラシが出てきた


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