ゴリラ・マスク『Iron Lung』(clean feed、2016年)を聴く。
Gorilla Mask:
Peter Van Huffel (as)
Roland Fidezius (b, effects)
Rudi Fischerlehner (ds)
今回はじめてピーター・ヴァン・ハフェルのアルトサックスを聴くのだが、一聴して薄い音だなあと思ってしまった。しかし繰り返して耳に入れてゆくと好きになってくる。
かれのアルトには、塩っ辛いような、沸騰して泡立つような、細かいヴィブラートがある。ロングトーンでも、トリオのサウンド全体に自分自身も常に追従するようなフレージングでも、ベースとドラムスとを挑発するように介入してくるときも、アルトの音のマチエールが高い摩擦係数の粘っこさを生み、鼓膜もその粘り気に絡めとられてしまう。ときおりフレーズの終わりにみせる、喉の奥に潜っていくような音もなかなかである。