Sightsong

自縄自縛日記

ジョニー・トー(3) 『ブレイキング・ニュース』

2009-03-29 00:19:26 | 香港

『エグザイル/絆』の痺れるような眩暈を求めて、同じジョニー・トーの監督作『ブレイキング・ニュース(大事件)』(2004年)をレンタル店で借りてきた。

喉をからからにして観た。やはり、多層的な速度、世界、感情が恐るべきスピードとテンポで錯綜する万華鏡、しかも中では火薬が破裂しまくっている。これを映画の至福と言わずして何と言うか。

強盗犯グループを追う警察、それがメディアを通じて社会問題となってしまい、警察はメディアを広告宣伝の手段として利用し、犯人逮捕ショーを演出しようとする。その電波を通じた映像、さらには立て篭もる犯人から発信されるネット映像、携帯電話による音といった情報が映画の内外で共有される。(もっとも、メタ映画として成功しているとは言えず、小道具として最高に面白いというところだ。)

生き残った犯人2人が立て篭もった部屋には、全く別の殺し屋2人が警察から逃げ込んでくる。ここでお互いに無関係な犯罪者、人質になった親子の奇妙な関係が生まれてくる。強盗犯が腹が減ったと言って料理を始めると、殺し屋も料理を手伝う。2人とも本職のような手際のよさであり、顔を見合わせてにやりとする。そして、人質を含め全員で一度だけの食卓を囲む。この展開が、さらに敵味方の呉越同舟での晩餐という、『エグザイル/絆』の忘れ難いシーンとしてのちに結実したに違いない。

強盗犯と殺し屋との友情が、ラストの思いつかない展開へとなだれ込んでいく。出来すぎた物語だが、これが何とも言えない余韻を残す。『エグザイル/絆』ほどの神がかったような映画世界ではない。タイトルも忘れ去られそうな凡庸さだ。だが、ジョニー・トーの作品であるから大傑作なのだ。

●ジョニー・トー作品
『エグザイル/絆』
『文雀』、『エレクション』

●Youtubeの映像
オープニングの銃撃
予告編


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