Sightsong

自縄自縛日記

モフセン・マフマルバフ『カンダハール』

2011-01-01 19:20:16 | 中東・アフリカ

モフセン・マフマルバフ『カンダハール』(2001年)を観る。「9・11」直前、タリバン政権下のアフガニスタン。カナダ在住のアフガン女性が、カンダハールに住む妹から手紙を受け取る。足を失い、女性に閉塞的な社会にあって希望を失い、次の日食の日に自殺するのだという。女性はカンダハールを目指すが、女性一人での旅はあまりにも危険で難しい。

ヘリで近づく山岳地帯と砂漠、その下ではすべての女性が顔を隠している。マフマルバフの発言録『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』(現代企画室、2001年)では、その布が抑圧の象徴なのだとマフマルバフは主張する。人口の半分が視えても視えない存在であることが、自分の社会からかけ離れた常識であることは理解できるが、それだけを取り出して絶対的な問題とみなすべきかどうかについては感覚的にわからない。映画においても、女性たちだけの中ではマニキュアを塗ったり布の下で口紅をつけたりしているだけに。

むしろ、タリバンが貧しい家庭を囲い込み、子どもたちに宗教教育(とはいっても、カラシニコフの使い方も含まれる)を施す姿、地雷により足を失った者たちへの義足供与が追いつかない姿に掴まれる。この後の米国介入、カルザイ政権下でのタリバン再復活を経た今、どのように状況が変わっているのだろう。

カメラの画角が狭いことには少なからず違和感を覚える。このクローズ・アップはマフマルバフの視線か。

●参照
モフセン・マフマルバフ『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』
中東の今と日本 私たちに何ができるか(2010/11/23)
ソ連のアフガニスタン侵攻 30年の後(2009/6/6)
『復興資金はどこに消えた』 アフガンの闇

●参照 イラン映画
カマル・タブリーズィー『テヘラン悪ガキ日記』『風の絨毯』、マジッド・マジディ『運動靴と赤い金魚』
サミラ・マフマルバフ『ブラックボード』(マフマルバフの娘)
バフマン・ゴバディ(1) 『酔っぱらった馬の時間』
バフマン・ゴバディ(2) 『ペルシャ猫を誰も知らない』
バフマン・ゴバディ(3) 『半月』
バフマン・ゴバディ(4) 『亀も空を飛ぶ』
ジャファール・パナヒ『白い風船』
アッバス・キアロスタミ『トラベラー』
アッバス・キアロスタミ『桜桃の味』


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