本橋信宏『新橋アンダーグラウンド』(駒草出版、2017年)を読む。
新橋という街の形成史や現在の裏の世界のルポなのかと思ったのだが、そうでもない。どちらかと言えば著者の自分語りであり、そんなことわざわざ書かんでもと密かにツッコミを入れつつも、なんだか妙に面白くてあっという間に読了してしまった。
まあ街なんて体系的に見ている人がいるでもなし、誰もが必死に生きていきながら身を置くようなものであり、このような見せ方が正しいのかもしれない。特に新橋のように個人の欲望を吸い込み続けてきた街はそうである。
それにしても、新橋のナポリタンが、勤め人のシャツに飛ばないよう粘っこく作られているなんて初めて聞いた説である。スタジオジブリの鈴木敏夫が「アサヒ芸能」出身であり、同誌は徳間書店の保守本流なんてやはり初めて知った。また、中丸明がかつてはやはり「アサヒ芸能」の伝説的記者であったことも初めて知った。たしかに人間は清濁というより濁濁としたものである。
まずは再開発が予定されているニュー新橋ビルを、あらためて探検しなければ。