水道橋のFtarriにて、サウンドアート3組(2017/9/3)。
■ 梅沢英樹+上村洋一
多くのドライアイス塊。机上に盛られた土と混ぜ、水を注ぐ。水が張られたガラス瓶に入れる。大きな鉄鍋に入れ、水を注ぐ。土も鉄も水もドライアイスが気化する温度より高いため、相転移が起きる。このサウンドアートは、プロセスをコミカルに見せるとともに、相転移時の音を拾い増幅するもののようだった。液体から気体への相転移による沸騰音は聴くことがあるが、固体から気体への相転移を使うことは初体験である。床に置かれたふたつの小さな装置(発信装置か、受信装置か)の上にはガラスコップがかぶせられ、共鳴を起こしていた。
■ 大和田俊
ラップトップを用いたノイズのミックス。凪のような音も、波濤のような音も、地鳴りのような音も、叩きつけるような音もあった。要素の数は多いのだが、逆にシンプルに絞ったサウンドに聴こえた。
■ 原口麻奈+山角洋平+池田拓馬
池田さんは八甲田山などで拾ってきた映像をガラス板に投影し、それが反射して壁に映し出される。原口、山角両氏の演奏の途中に、ガラス切りでキイイという音を立ててはパキリと折り、また戻す。やがてそれは奇妙な構造に組み上げられ、流水や炎のフラグメンツが天井や壁のそこかしこで脈動することとなった。
原口さんは英語でさまざまに呟く。「Music is a meeting of...」、その先は言わず宙ぶらりんにする。その保留がサウンドや映像の脈動とシンクロする。ガラス切りでマテリアルに傷をつける音、原口さんの親指ピアノによる不協和音が、奇妙な音の平衡状態にヒビを入れるように思えた。その結論として「Nothing in the room」とは、われわれも果実を与えられず保留状態に置かれたわけである。