アンソロジー・フィルム・アーカイヴズに足を運び、ルイス・ブニュエル『黄金時代』(1930年)を観る。ブニュエルの監督第2作であり、前作『アンダルシアの犬』に続き、脚本をサルバドール・ダリと協力している。
1時間ほどのフィルムは奇怪なプロットで埋め尽くされている。
イカれた男が登場し、泥の中で女といちゃついているところを取り押さえられる。連行される途中、男は偏執狂的に(ダリ的に)、目に入った犬や虫をことごとく殺そうとする。逃れおおせて入ったパーティー会場では、うっかり自分の服にワインをこぼした老婦人に激昂し殴り、庭に逃亡。泥の中から引き離された女とようやく遭うことができ、庭で抱き合うも、ふと目に入った彫像の女の足が気になり、舐め始める。女もうっとりして舐める。
道徳を嘲笑し、倫理には無配慮で応え、倒錯、分裂、フェティシズムといった人間の業をなんのためらいもなくこれ見よがしに提示する映画。ブニュエルもダリも天才だ。公開当時、右翼がスクリーンに爆弾を投げつける事件が起きて、その後50年間公開が封印されたというが、当然かもしれない。