Sightsong

自縄自縛日記

辺野古の似非アセスにおいて評価書強行提出

2011-12-27 10:15:06 | 沖縄

名護市辺野古において、国家自らが文字通り人権を蹂躙し、なりふり構わず進めてきた米海兵隊の新基地建設。メディアは国家と結託し、普天間移設というストーリーを執拗に広め続けた。日本政府は抵抗する住民に対し、あろうことか国軍(海上自衛隊)を差し向けた(2007年)。

国家意志は民主党政権になっても変わりはしない。鳩山政権は、これを覆そうと試みたものの、結局は完全に屈服した。菅政権は、面倒な問題として無視した。そして野田新政権は、端から自民党時代の方法を踏襲した。そもそも、パッケージだからといって「普天間移設」というキーワードを(メディアも含めて)使うことが欺瞞なのであり、このことばを使うこと自体が、辺野古の基地ができなければ危険な普天間は永遠に存在し続けるという脅しに他ならない。実際のところ、米国の軍事予算を補助し、その上便利な新基地を作ってあげるのであるから、「辺野古新基地」と称さなければならない。

地域社会と人権の弾圧ばかりではない。日本の環境影響評価法(アセス法)の施行はOECD国の中で最後であったが、そのうえ、曲がりなりにも存在する法を国家自らが破ることになる。呆れた環境後進国である。

この環境影響評価の内容がその名に値しないことはこれまで何度も書いてきた。

○辺野古・大浦湾のジュゴンアオサンゴ等の生態系への影響が過小評価されている。
○「方法書」以前に事前調査を行い、それを「方法書」に基づき行うべき現地調査の成果として組み込み、欠陥だらけの「方法書」と「準備書」を通過させる、と方法は、真っ向からの環境アセスメント法違反である。
○「方法書」から、追加修正、「準備書」と進むに従い、環境影響評価そのものに関わる内容が追加されてきた(後出しジャンケン)。たとえば、オスプレイ配備、洗機場、ヘリパッド、弾薬搭載エリア、燃料桟橋である。また、埋立の砂をどこから持ってくるかの問題もある。このような場合、「方法書」の作成にたち戻らなければならない。

従って、今回の郵送による評価書提出に関して、沖縄県知事が「法令や条例に基づいてやるのだから、出すなというわけにはいかない」と発言しているのは、「提出」という一点だけをとってみればその通りだが、アセス全体がもはや法律違反になっているいま、態度保留の弁と受け取られても仕方がないかもしれない。

問題は、仮に「知事への埋立申請」まで進んだ後である。本来は、知事が許可しなければ終わる話である。しかし、これまで様々な「禁じ手」が取り沙汰されている。

1)埋立手続を国が代行する特別措置法の制定

野田首相はその可能性を否定している。一坪反戦地主会のYさんに訊ねたところ、一応は全国を対象にしている駐留軍用地特措法と異なり、今度はあからさまに沖縄に特定した特措法になるわけであり、それはあり得ないだろうとの見解。

また、「国際関係論と安全保障論の学徒」 @fj197099 さん(>> リンク)によれば、

「再来年の衆院任期を控えて対決度を増す国会でそれが通る見通しはない。野党の賛成は与党の衆院解散を前提としたものになるだろうし、与党はそんな条件は飲めないだろう。」
「よしんば特措法が通せても、その後の工事着工が不可能だろう。反対派は法律違反をものともせずになりふり構わぬ妨害工作に出るだろう。海保や海自など法執行機関どころか実力組織まで含め相当強権的に反対派を排除しないと工事など出来ない。」

2)国土交通相が知事に勧告・指示し、従わない場合には国が行政代執行求め提訴

「沖縄タイムス」(2011/12/14)において報道された(>> リンク)。

3)防衛局が国土交通相に審査請求、国土交通相が不許可取り消し

このオプションは、今日の「東京新聞」(2011/12/27)で初めて目にした。

いずれにしても、白色テロ、あるいは国家テロ(太田昌国)とでも称すべき国家暴力なしには成立しえないものではないか。

●参照
ついに辺野古の似非アセスにおいて評価書強行提出か(怒)
由井晶子『沖縄 アリは象に挑む』(特措法の危険性について指摘)
原科幸彦『環境アセスメントとは何か』
二度目の辺野古
高江・辺野古訪問記(2) 辺野古、ジュゴンの見える丘
名古屋COP10&アブダビ・ジュゴン国際会議報告会
ジュゴンの棲む辺野古に基地がつくられる 環境アセスへの意見(4)