エリック・ドルフィーのCDも随分手放してしまい、手元に残っているのは『Last Date』(Fontana、1964年)と『At the Five Spot』2枚組(Prestige、1961年)だけだ。それだけに愛着があってよく聴く。前者は、何しろミシャ・メンゲルベルグとハン・ベニンクが参加している。
『At the Five Spot』は、1961年7月16日のライヴ一続きだが、最初に聴いて鮮烈な印象が残ったのが2枚目の方だったこともあり、いまだ1枚目よりも好きである。誰かがテーマのメロディーを口ずさみ、ざわざわした中でエド・ブラックウェルのお祭りのようなタイコからはじまる「Aggression」。ブッカー・リトルの火が付いたようなトランペットソロがすさまじい。下手すると演奏がぶち壊しになってしまうような、つんざく音をおもむろに差し挟む。皆驚かなかったのか、それとも以前からそうだったのか、それともそんなことで驚くような面々ではないのか。
エリック・ドルフィー(バスクラリネット、フルート)、ブッカー・リトル(トランペット)、マル・ウォルドロン(ピアノ)、リチャード・デイヴィス(ベース)、エド・ブラックウェル(ドラムス)という、今では考えられないメンバーである。マル・ウォルドロンの執拗に同じ和音を繰り返すソロは素晴らしい。そのマルも2002年に亡くなり、もはやリチャード・デイヴィス以外は鬼籍に入ってしまっている。
ドルフィーについては、1曲目のバスクラも当然良いが、2曲目「Like Someone in Love」のフルートソロが本当に美しい。『Last Date』での「You Don't Know What Love Is」、『Far Cry』での「Left Alone」など、ドルフィーのフルートは心に残る。
1999年にリチャード・デイヴィスにサインを頂いた
●参照
○エルヴィン・ジョーンズ+リチャード・デイヴィス『Heavy Sounds』
○マル・ウォルドロン最後の録音 デイヴィッド・マレイとのデュオ『Silence』