わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

インターステラー

2014-11-16 | 映画・ドラマ・本
 (おたくな)仲間うちでずいぶんと評判が良いので、私も隣町に見に行きました。4Kバージョンでしたが、何ぶん、スクリーンの小さな劇場なので、ありがたみは感じられなかった。IMAXなんて一時間車で走らないとないさ…

 この作品の売りの一つは、CGを使わず、カメラで撮影した宇宙映像。折角だから、もっと大きな画面で見たかった。

 ネット等で見ても、この映画の評価は賛否両論ですが、確かにはまり込める人と、冷めた目で見てしまう人が両極端に分かれてしまいそう。私は後者かな。サントラはいいし、主役のマシュー・マコナヒーは、私は特に好きな役者さんではないのですが、上手いな!ッて思ったし、アン・ハザウェイも可愛かった。3時間近くの長丁場で、途中で少しだれちゃったけど、最後の30分はドキドキしたし、思わず泣いてしまった。でも、この169分間に数作分の映画の内容を詰め込んだ感じで、もっとテーマとか焦点を絞ってくれたほうが見易かったのにって思う。SFなんだろうけど、エンディングはファンタジー、夢物語のよう。実際に物理学者が製作に関わっているので、理論上では「科学的に正しい」のかもしれないけど、そういった知識のない私には、ワームホールの話や5次元のコンセプト、巨大ブラックホール、ジャイギャンティアが出たら、そこでラッキーチャンスのハッピーエンドってのがご都合主義っぽく思え、むしろ荒唐無稽な話に思えてしまいました。
  


 近未来の砂嵐に覆われた地球、作物がとれなくなり、最後の頼みの綱であるとうもろこしも数年後には絶滅し、人間の肺は砂に侵されている。この映画には、人間以外の動物が全く出てこない。人類は滅亡に直面している。かつてNASA最高のテスト・パイロットだった主人公のクーパーは、過去の記憶に悩まれつつも、義理の父、息子と娘の4人でトウモロコシを作って暮らしている。オクラや小麦など他の作物は全て全滅、最後の頼みの綱のトウモロコシも後数年で死に絶えるという状況の中では、農業が最重要であり、アポロの月到着は嘘というのが常識になっている地球。

 でも、ここの政治形態やアメリカ以外の国はどういう状況なのかは全く説明されない。トウモロコシがなければ、米を食べればいいじゃない、とか、日本人としては言いたくなっちゃうんだけどな。人類の未来としての宇宙はありだけど、国外はアウト・オブ眼中なのか?砂嵐がすごすぎてコミュニケーションが取れないのか、アメリカ以外は全滅したのか、なにか説明があっても聞き逃したのかもしれないけど、かなり気になるところ。

 ともあれ、そんな状況では、宇宙開発なんてのは無駄とみなされているので、NASAは地下に潜って活動しています。こっそり宇宙航行できるロケットとか作ってるし、既に一般には気付かれずに移住できる可能性がある星を探しに宇宙飛行士を送ってるし、大した秘密組織っぷりです。移民計画を率いるのは、ノーラン映画の常連、マイケル・ケイン。主人公のお舅さんがジョン・リスゴーなんで、この二人の絡む場面があったら良かったのになぁ、って、思った。

 その秘密地下組織、NASAをあっさり見つけた(誘導された?)クーパー父娘。あっさり宇宙に移住できる星探しに行くんで宇宙船、運転してってよと頼まれる。神業パイロットらしいが、いきなり前にテスト飛行で事故って、その後は何年もトウモロコシ作ってたオヤジに任せていいのか?と、思うんだけど、それだけ人材不足なんでしょう。ほんとに運転(操縦って言えよ!)上手いの。マイケル・ケインが大事な一人娘を乗せた船を任せるくらいですから。主人公チートってんですか?

 で、最初の惑星に着いたら、これは水の惑星。ソラリスかと思ったら、単なる津波の惑星で、ここで一人死亡。ブラックホールに近いんで時間の流れが遅く、母船エンデュアランスに帰ったら23年経ってた。ここで、一人で待ってた黒人さんの精神力、すごすぎ。それなのに、次の惑星であっさり爆死。ひどい。この惑星じゃ、先発隊として飛び立った科学者が冷凍睡眠で生きてたんですが、これが白髪交じりのマット・デイモンで、一目で「こいつは悪者だな」って感じなの。案の定、人類の住めそうにもない星から、救援されようと捏造データを送り続けていたのだな。で、普通に他の連中と協力すりゃいいのに、自分だけ地球に帰ろうとして、止めろっつてんのに無理やり母船にドッキングしようとして爆死。だから、ただ、やめろって叫ぶだけじゃなくて、爆発するから止めろってちゃんと説明してやれよと思った。

 その後、主人公は人類史上初のブラックホールへ突入を果たすことになるのですが、なんとブラックホールの中は、自宅の娘の部屋の本棚の裏だったですよ!この作品には、重力に関しては著名な物理学者がしており、科学的に検証された理論を基にしているって聴いていたので、これはかなり驚きでした。ここまで城跡通りに来たお話が、いきなり驚きの展開ですよ。娘の本棚を通じてメッセージを送っていたのは、未来のお父さんだっという、実は未来から身内(若しくは恋人)だったというネタは何ら珍しくないけど。ブラックホールの中が本棚の裏ってのがびっくりですよ?

 父と娘の絆が人類を救ったというお話で、父娘の感動の物語でもあるんだけど、息子の存在が蔑ろにされ過ぎてて、なんか泣ける。自分に似て科学に興味があり、パパ大好きの娘が可愛いのはわかるけど、イマイチできの良くない農業向けの息子だって我が子なら同様に可愛いと思うんだけど、それまで自分をおいてしまった父が許せず、宇宙通信にも表れなかった娘が、自分と同年齢になってしまったと通信してくるようになってからは、息子のことなんかどっか行っちゃってるようなのは、お父さん、それはないよ…って思ったし、医者なんか信じらんねぇーと、すっかり田舎のオッサンになってる息子の扱いが可哀想過ぎる。ちなみに、この娘のBFらしき医者は、ここんとこすっかり落ち目のブランドン・フレーザー。

 クライマックス後に主人公が宇宙ステーションで目覚めた時は、正直、「ラスト・サムライ」でトム・クルーズだけが何故か生き残っていた時と同じ脱力感を味わいました。でも、怒涛のクライマックスから年老いた娘との再会、そして再び宇宙へのラスト30分は泣けましたが。音楽も良かったし、四角いロボットたち、TARS、CASE、KIPP達は萌えキャラ。何かの頭文字かしらね?アナライザー、R2PO、マーヴィン、メカ沢くんと、今までのロボットは丸かったけど、この子らは角い。角いけど早い!しかも、正直度やユーモアのセンスが設定できる。データくんにも、その機能つけてあげたい。

 科学を研究するよりお化粧やファションを研究してる時間の長そうなイケメン、美女が天才科学者とか、その分野の第一人者って約をしている映画の多い中、宇宙へ飛び立つアメリア・ブランド博士のアン・ハサウェイ、クーパーの娘マーフ(マーフィー)のジェシカ・チャスティン、そしてマン博士のマット・デイモンと、ちゃんと、頭良さそうな見た目の人達なのが良かったです。ショートカットに黒のセーターとパンツのアン・ハサウェイ、シュッとしてかっこいい。オードリー・ヘプバーン風ですよ。最後は、クーパーさんが宇宙船かっぱらって、アマンダさんが一人でオプションB(もー、地球の人間は諦めて、凍結受精卵を他の惑星で孵化させ、種を保存すること)やってるエドモンドの惑星へ向かってめでたし、めでたし。

それにしても、アメリカ人以外の人類はどうなったんでしょうねぇ…?


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