シノワレコード

女性Vo60sサイケガレージ的Indiepopバンド"シノワ/shinowa"のGtヒラタによる色々レビュー&世間の話題

2006年シノレコ再発アワード ~コアラのマーチ(いきなり大賞発表!)

2006年12月31日 | 米サイケ・ガレージ
今年は特に秋口から本当に多忙を極め、気が付いたら大晦日の2007年まであと1時間を切ったという時分である。
メールもすべきことも膨大に貯まったまんまなのだが、今日の午後がんばって年賀状を書いて、さっき出して来た。
正月気分ゼロ・・・のはずだったが、さっき見た紅白歌合戦の藤あや子の曲がベースラインなどがライドの曲っぽかった(笑)ので、ちょっとだけテンションもあがって、急性アル中の如く一気に正月気分が高まってきた。

となると、すっかり忘れそうだった毎年の伝統行事(といっても2回目)のシノレコ再発アワード(昨年の大賞はアーニー)の大賞を、いきなり発表しないといけなくなりました。


実は、10月2日付けの記事に紹介した、Bob Lind の "Since There Were Circles" でほぼ決定のつもりで考えていたのだけど、年末になり最後に大どんでん返しが!!!

それは、コアラ。
コアラとは、そう。コアラのマーチのコアラである。

この The Koala というバンドは、ジャケはサイケのレコードガイドなどで見たことがあったのだけど、これも先日ブログに書いた、FALLOUTから再発されてたのだ。
レコ屋で試聴して、秒殺されました。

69年リリースのこのアルバムからは、チョコレートウォッチバンドや、ZOOなどの、江戸昆布もの(ここを参照)。それの基本でもあるストーンズフィーリング。またはリッターなどのサイケガレパン。そういうのを連想させられます。
サイケのバイブル本 "Fuzz and acidflowers" の最新版には、「Autosalvageや、Druids of Stonehengeを連想させる」とあり、なるほど、確かに曲調もメランコリックなところが随所にあり、この両バンドに確かに似ている。
そして、ギター二人のソロの絡みが非常に良くて、まさにギター主導型のロックの幕開けを感じさせるかのようだ。
カリカリのカッティングもあり、ボソボソした音ももあるかと思えば、ハイエナジーなファズも炸裂している。
またよくあるベタなブルース・R&Bフィーリングむき出しガレージではなく、楽曲が非常にポップかつメランコリックで(R&B流れのポップソングベースとでもいうべきか?)、これにガレージさや、プリミティブなハードロックさとちょっとチープなサウンドが絶妙のところで調和してます。
さらに、バラードっぽい曲もまたいいのだ。

ざっと探したところ試聴できそうなページはなかったのが残念。
このバンドにはベタなサイケフィーリングはあまり感じられないものの、チョコレートウォッチバンドでいう「Let's Talk About GIrls」みたいな曲をするバンド。これはサイケ・ガレージ好きは一度は聴いておきたいバンドだろうと思う。
ガレージは好きだけど、サイケはちょっと苦手・・・という人もこれならいけるはず。
荒々しいロックンロールといった趣にも感じていただけると思われます。

このバンドはニューヨーク出身のバンドなのだが、レーベルの戦略でオーストラリア出身のバンドっつうことにしといて、オーストラリア向けに売り出そうということになったらしい。ちなみにレーベルは超メジャーのキャピトルである。
だから、バンド名は「コアラ」なのだと考えられるのだ(ここは笑うところ)。

エイベックスが、東京生まれの江戸っ子バンドを採用はしたものの、思ったよりショボかった・・・そこで、ちょっと音楽レベルも低くて、ほどほどに郷土意識も強い山口県人にターゲットを絞り、あろうことかバンド名を「The フグ」として、さらにメンバー全員を山口県出身ということにして、郷土愛を偽装した。というようなことだろう(以上、あくまでも説明概念ですので誤解なきようお願いします)。
なお、裏ジャケを見ると、「From Australia For You」「From Australia To You」と繰り返し書かれている。
徹底的である。

上記 サイケ本の "Fuzz acid~ " に書いてあるのだが
 they didn't know a thing about being from ' Downunder ' until they saw the record in the stores!
 意訳)彼らは、レコード屋でレコードを見るまで、自分たちが地球の裏側からやってきたとは知らなかった!
ということだったらしい。さらにキャピトルはほとんど宣伝もしなかったらしい。

もしや、オーストラリア出身とは、元々の「コアラ」というバンド名から思い付いた、キャピトルのアイデアだったのか?
まあ、一方でバンド名がレーベルの意向だったとすれば、コアラのメンツはレコ屋で自分のレコードを見た瞬間、すべてを悟っただろう。
ひどい話だけど、人ごとだから笑ってしまうということでいいだろう(笑)

ちなみに、プロデューサーは、ブルースマグースを成功させた人物(Bob Wyld と Art Polliemus )のようだ。
こちらにレコ評があります。

なお、コアラのボーカル Jose Mala さんは、なんと Jay Mala と名前を変えて、ニューヨークドールズなんかと活動していたMagic Trampsにボーカルとして(ここに詳しいです)加入。
さらには、なんとエアロスミスのジョー・ペリーの「ジョー・ペリープロジェクト」のボーカルもつとめた方なんだそうだ(ここの上から七行目に名前が出てます。)結構な大物やん。
コアラのリードギターのLouis Caine さんは、Sir Lord Baltimore というアメリカンハードロックバンドに参加しているらしい(ここに詳しいです)。

後に成功した彼らにとってコアラとは、まさに封印したかった過去に違いない。


なお、FALLOUTは、ニクイことに「カンガルー」というバンドも再発してる。
カンガルー
オーストラリアが今、再発界でキてます。

というわけで、今年のシノレコ再発アワードの大賞はコアラでした!