Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

神保町古本祭り

2018-11-06 12:32:06 | ラジオ亭便り
カフェを臨時休業日にして神保町の古本祭りへ出かける。前日3日の好天が恨まれるような小雨混じりの曇天日だ。雨が本降りにならぬことを祈りながら靖国通りを三省堂辺りから神保町交差点へ向けて歩き出す。小雨にもかかわらず古本祭りの最終日は見物客でごった返している。

目玉の仮説店舗の陳列書籍を物色する。目が眩むような膨大な本の中にお目当ての本を探す。それもリーズナブルな値段で掘り出す快感が古書祭りの醍醐味だ。今回もそんな喜びを味わえる数冊の本に出会えた。中野重治短編小説集「眺め」中村汀女句集「都鳥」畑中純、アルミトランクケース入り 限定春画集「月光」大阪市立美術館、根津美術館他編集「美濃古陶」等である。



この日の極めつき優品は中村汀女の昭和26年初版「都鳥」に尽きる。スワン堂古書店さんの出品からゲットする。通常価格1500円の半額だ。中村汀女が昭和期日本を代表する俳句の大家であるくらいの予備知識は高校時代の教科書で知っていたが、俳句門外漢の自分がそうした大家の初版単行本を手にするのはこれが初めて。戦後の質素な印刷用紙にせめて表題だけでも贅沢しようと外箱のタイトル部分が銀箔用紙に印字されているまことに地味な本にすぎない。

しかし中身を取り出してびっくりする。小倉遊亀がこの本の為に素晴らしく懇切な装丁と挿絵を担当しているではないか。銀色の表紙に描かれた色絵壺の艶やかな彩色挿絵に目を奪われてしまう。これで買いは決まったが、更に魅力を高めているのはこの句集の四季に区切られたコンテンツの節目に描かれている小倉遊亀の見事な挿絵である。梅、土筆、白菜、どれもこれも感動を呼ぶ絵筆の冴えが充満している。仕事盛りの年齢が為せる業だろうか。

中村汀女の戦後東京生活を詠んだこの句集の良質な叙情性はちょうど映画に喩えるなら、我々が小津安二郎から感じる空気と同質なものを感じる。小倉遊亀の高級箸休め的挿絵を味わいながら、中村汀女の 嗜み深い言葉の正統的な綾織りを倍にして愉しむ。隠然たる市井生活の快味を感じる瞬間である。


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